2016年12月18日

【読書狂の冒険#046】中村やにお/F.E.A.R『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイメビウス1 キミだけが望むすべてだから』ストリエ

 リプレイの3つ目は、メビウスから。無限に円環が続くメビウスの名の通り、主人公たちがループから抜け出すことを目的とする、少し変わった物語だ。ちなみに、前回紹介した『春日恭二の事件簿』に登場するPCの1人墓守清正が初登場したリプレイでもある。
 そして、ここだけ出版社の表記富士見書房ではなくストリエなる聞きなれない名前になっているのだが、これにも理由がある。ストリエというのは実は出版社ではなく、イラストや吹き出しを使ってストーリーを作ることのできる投稿サイトのこと。ここにドラゴンブックの公式チャンネルがあり、メビウスの第1話が配信されているというわけだ。
 ちなみに、別の投稿サイトであるカクヨムではメビウス最終話直後の墓守清正とネズミのストーリー『Virtual Light Incognito』、さらにサプリメント『レネゲイドウォー』にちなんだ彼らのストーリー『The Show Must Go On』がPLである田中天氏によって公開されている。カクヨムには他にも公式のレーベルが公開している作品が多くあるようだし、作品のプロモーションの仕方もちょっとずつ変わっているのかもしれない。
 というわけで、今回は1冊ではなく1話に対する書評ということになる。

 本作のテーマの1つが、さっきも書いたように「ループ」だ。第1話では時間がループすることになる。これはもはやループもののお約束だが、キャラクターによってループしている回数にばらつきがあるのが、1つ面白い展開を呼ぶことになる。PC1である緋蜂紅はループのことを知らないままにシナリオに突入する。PC3である墓守清正やPC4である篠月秋雨はループを知っている。そしてPC2鳩宮アンゼリカは知っていることを隠している……といったようにだ。無論この違いはNPCにもあり、それがストーリーに深みを与えていくことになる。
 そしてループなのだから、当然周回する。1周目で出来なかったことを2周目にするのか、わかってて同じことを2周目にするのかでPCのキャラクター性がはっきりと見えてくるのも面白い。ちなみに紅は「わかってて同じことをする」タイプのようだ。そっちのほうが主人公している感じは強いだろう。

 そしてもう1つのテーマが「秘密」だ。ここに登場するキャラクターは多かれ少なかれ秘密を抱えてシナリオに参加している。今回は1話しかなく、続きは見られないのですべてが明らかになるわけではないが、それでもそこそこの秘密が明かされている。続きを読みたくさせるという意味では、1話でまずはスッキリ終わる……といったことのない本作をプロモーションに使ったのは正解だったのかもしれない。
 それをリプレイを見て思うのが、やはりPLそのもののレベルの高さだ。秘密を抱えた上にループするという複雑なシナリオを破綻なくまわすには、GMだけでなくPLの協力も必須である。シナリオの意図を十分に把握し、適度に引っ掻き回しながら演じることができるのは、流石だろう。寄せ集めの野良卓で同じことをやろうとしても、中々こうはいかないだろう。そもそも顔見知りではない人々による卓では意図を共有するのも難しいが。
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2016年12月14日

平成ライダー映画個人的ベスト10

 先日、Twitterでのタグで平成ライダー映画ベスト10を挙げるみたいなのがありました。その時私もTwitterであげたのですが、折角なのでこちらでも少し詳しい評と共に挙げておこうと思います。
 なお、映画の選は私の見ていないゴースト劇場版とMOVIE大戦ジェネシス、Vシネマのマッハ/ハートが対象外になっています。
 無論、ネタバレ注意です。

第10位 オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー
 まずはオーズのお祭り映画から。今ではお馴染みの冬映画の先鞭をつけたのが本作でした。オーズに電王という、小林靖子脚本の2大ライダーがそろい踏みです。ディケイドのときも思いましたが、やはり電王はデンライナーで駆け付ければすべての説明がつきましすし、主演の佐藤健こそライダー映画に出ることが無くなってしまいましたが、モモタロス役の声優である関俊彦、小さくなった良太郎役の溝口琢矢、New電王役の桜田通のだけかが出るだけでご本人登場感が出るので、いろいろな意味で便利な設定をしてますね。
 ストーリーも、過去に向かったアンクがセルメダルを落としてしまうところから始まる、タイムマシンものの定番をおさえたものであり、でも一方で今までの電王にはなかった展開でもあるというツボを突いたものでした。オチも少年ライダー隊の子供が成人した姿で登場し、広場に集まった一般人たちが手渡しでオーズドライバーを映司に渡していくという、タイムトラベルという題材をうまく使いつつオーズのテーマもしっかり拾う綺麗な展開でした。

第9位 劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!
 またも電王です。子供の頃の良太郎というその後極めて便利に使われる設定と、全フォーム同時変身というベタだけど手に汗握る展開を初めて行ったという点においても優れた作品です。ですが本作の優れた点は、実は映画以降にあったりします。電王クライマックスフォームは、寝ている時の良太郎にイマジンたちが憑依したために、記憶の結びつきが希薄になり消滅するという危機から生まれます。劇場版とTVシリーズをここまでしっかり接続させたのはあとにも先にも本作だけですし、それを新形態への布石としても利用する計算高さは、流石小林靖子と言えるのではないでしょうか。

第8位 仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム
 MOVIE大戦シリーズから、ウィザードとフォーゼが主役の1本です。フォーゼ編は本編終了から5年後という思い切った時間軸の設定でしたが、普通にタイムトラベルしましたね。こんなのはライダーでは日常茶飯事です。教師になった弦太朗の新たな苦悩をしっかり描きつつ、彼の成長と世代交代を見せています。過去の東映特撮からイナズマンが登場しますが、とってつけたような作劇ではなく彼のヒーローとしての活躍にもピントを合わせています。サナギマンのときの、目だけが異様に人間的な造形が印象的でした。
 ウィザード編では、奇妙なアンダーワールドに取り込まれた晴人の活躍を描いています。ちょっとホラーテイストも入っているというか、あまりライダーにない雰囲気の展開だったので面白かったです。そしてフォーゼとの合流パートでは、W、アクセル、オーズ、バースの各ライダーも登場し豪華な感じに。少々ごちゃついている感も否めませんが、こちらも各ライダーのフォームチェンジといった特徴ある戦い方を丁寧に描いており、ファンとしては満足感の高い仕上がりです。

第7位 仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010
 またもMOVIE大戦シリーズですが。W編では、本編でも明に暗に語られていたビギンズナイトに焦点を当てた展開でした。W誕生の秘密に迫りつつ、翔太郎がおやっさんを死なせてしまった過去を乗り越える作劇は、その後のW本編での翔太郎のキャラクターにも深みを与えるものでした。しかしおやっさんに吉川晃司は渋すぎる。メモリの頭文字によるミスリードは、恐らく劇場版公開直後だっただろうアクセル初登場回『Iが止まらない』と被ってしまっているので少々残念ですが、園咲家の3人が並び立って変身するシーンは印象的です。
 ディケイド編は、非難ごうごうとなってしまった最終回へのアンサーとしては少々力技ながらも完璧な回答だったと思います。渡の言う「ディケイドは過去のライダーに再び注目を集めるためにいるのであって、ディケイドに物語は必要ない」という趣旨の発言は、メタなセリフであると同時に批判への強烈な皮肉ともなっています。

第6位 仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーアクセル
 私のような、後日談好きにはたまらない作品だったと思います。結婚後の照井竜と亜樹子の様子、本編にも登場した風都の面々の再登場、刃野刑事の意外な活躍といった要素を含んでいます。ストーリーはべたで新鮮味に欠ける印象がありますが、アクセルのカッコよさとWの貫禄はそれを補って余りあります。

第5位 仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル
 後日談ものといえば、こちらもそうですね。無論先述のフォーゼやディケイドだって後日談なのですが、本編との繋がりが比較的稀薄なのでその印象がどうも薄いんですよね。その点、本作の鎧武編は本編からそんなに時間が経っていないので、後日談という感じがばっちりです。鎧武編でしたが、主役は呉島兄弟でしたね。本編ではヒーローになり切れなかった彼らの、ヒーローとしての姿がここにありました。デュークとバロンの復活は、その後の彼らの言動を含めて説得力の強いものでした。
 ドライブ編も、本編開始からわずかな時間しか経っていない中での劇場版の作劇という難易度の高い状況をものともしない完成度でした。しかも、「全シフトカー集合」かつ「一定速度に達する」というベルトさん再起動の条件をここで既に伏線として提示していますから、ドライブの作り込み具合がうかがえるというものです。やたら登場人物が死にまくるドライブにおける、記念すべき死者第1号でもありますが。
 ドライブと鎧武の共闘パートでの、彼らの会話もキャラが出ていていいですね。あそこまでしっかりやり取りする共闘パートって、案外今までなかった気がします。

第4位 劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼
 ようやく平成1期の登場です。まあ平成1期は基本的に1作に1本しか映画がないので……。
 本作は戦国時代というこれまた思い切った舞台設定で展開しますが、響鬼の雰囲気とは完璧にマッチしています。大量のライダーが乱闘になるシーンもありますが、本編のことがあるので「でもどうせ共闘するんでしょ?」と安心してみてられますね。本編の設定ともつながる結末もよく出来ており、平成1期における劇場版のお手本とも言うべき整いっぷりです。
 残念なのは、ライダーが音撃を揃って繰り出すシーンが騒音にしか聞こえないという点です。

第3位 劇場版 仮面ライダーウィザード in Magic Land
 最近のライダー映画って、ど派手なアクションで盛り上げてくれるという意味で傑作であることが多いのですが、本作はそうではなく脚本の丁寧さ、巧みさにおいて「傑作だな……」としみじみと思わせてくれる作品です。アンダーワールドや幹部怪人といった劇場版では放置されがちな要素をしっかり盛り込みつつ、きちんと作劇に生かす点は見事です。シイナの作ったフラワーウィザードリングによって黒幕の思惑が明らかになるだけでなく、最後の戦いにも生かされる展開もいいですね。
 無論それだけでなく、フェニックス復活、ほぼ全員のレギュラー登場人物が仮面ライダーに変身するという映画ならではのお祭り感も兼ね備えています。普段は真面目な凛子ちゃんが、大真面目な顔をしてノリノリでメイジに変身するのはちょっとシュールでした。MOVIE大戦でコヨミも変身するので、レギュラー全員が1度は変身するという珍しい作品になりました。

第2位 仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX
 2大ライダー共演というだけで既に要素過多な気もする映画に、前々作のWと昭和ライダーまで入れ込んで成功させるという奇跡をやってのけたのが本作です。小林靖子×中島かずき×坂本浩一がなせる技でしょうか。
 オーズ編は、あの最終回からどのようにしてオーズとアンクが復活するのかという問題を解決した展開でした。未来からコアメダルを持ってくる、ライダーならある意味模範解答かもしれませんが。震災のためにうまく扱えなかったという逸話もあるシャウタコンボを始めとする水のアクションが印象的でした。
 フォーゼ編は、文化祭という高校行事をうまく取り込んだ番外編でした。弦太朗って恋とかするの?という疑問にもばっちり答えました。そして弦太朗のために戦う仮面ライダー部の面々の、ライダー任せにしない戦いもこの時点で完成されていました。
 そして圧巻は共闘パート、先輩風を吹かせる翔太郎がいつものハーフボイルドであると同時に、カッコよくも見えます。オーズとフォーゼの映画なのに、やっぱりWはいいなと思わせられ、少し彼らの存在感を食ってしまっている気もします。

第1位 仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ
 そして堂々の第1位が、W劇場版です。ランキングの10作品中4作品がW関連なのでW贔屓だと言われると反論のしようもないのですが、それくらいWは素晴らしい作品なのです。
 導入とT2ガイアメモリによって出現した再生怪人との戦いで、作品の趣旨を見ていない人にもわかりやすく説明してから本筋のストーリーに入るという作劇もいいですし、フィリップの家族への思いに焦点を当てた展開もいいですね。特に本作の公開はTV本編では園咲家との最終決戦前の時期でしたし、そこを掘り下げておく必要性も十分ありました。
 そして何より印象的なシーンは、Wのサイクロンジョーカーゴールドエクストリーム登場のシーンです。今まで本編に登場し、Wに救われてきた人々の声によって最強のフォームに変身する展開にはしびれました。このような、今までヒーローがヒーローとして積み上げてきたものが一気に解放されるシーンが大好きなので、余計に印象に残っています。

 というわけで、独断と偏見によるベスト10でした。
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2016年12月11日

【読書狂の冒険#045】丹藤武敏/F.E.A.R『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ 春日恭二の事件簿』富士見書房

 今回はダブルクロスリプレイの中でも最新の1冊。主人公が敵組織FHの代表的なエージェント春日恭二であることから話題になった。
 本書の話をする前に、春日恭二について軽く触れておこう。前回の記事で、ジャームによる脅威から社会を守る組織であるUGNに触れた。そのUGNの対立組織であり、オーヴァードの力を自身の欲望のために使うことを志向する組織がFHである。そして春日恭二はこの組織に属する人間である。
 春日恭二がDXプレイヤーに人気である理由の1つが、その三下っぷり、中ボスっぷりである。第3版では、まず基本ルルブ1のサンプルシナリオで覚醒したばかりのPC1の当て馬がごとき役割を与えられるところから始まる、まさに「噛ませ犬」っぽいキャラの典型である。そんな彼がリプレイで主役を張るというのだから、界隈に走った衝撃と笑撃は相当なものだった。

 しかも、その悪役が第1話のスタートでラーメン屋のバイトをやっているのだ。本書の初めに来る扉絵には、普段のルルブではいかめしく悪い笑顔をたたえているオッサンが、完璧な接客スマイルでラーメンを配膳している姿がカラーで描かれている。これで笑うなというのは無理だろう。
 しかしそれにはきちんとした理由があるのだ。それはネタバレになるので秘しておくが、第3版から入った人よりも、第1版の初期の春日恭二、つまり彼が敏腕エージェントであったころから知っている人へ向けたサービスの意味合いもあるのだろう。
 第2話ではさらに混迷度合いが増していく。PCである春日恭二が、他のPCに正体を明かせないという謎の制約のせいで仮面をつけて誤魔化す羽目になるのだが、全然誤魔化せていない上になぜかころっと騙されるPCというお約束の展開で進んでいく。さらにジャームに攻撃されたものが全員春日恭二に変化するという、結末が全く予期できない展開を見せる。結末は「卓ごとに違った姿で同一時間軸に現れる公式NPC」という、TRPGのメタな問題点に対する回答となっていて、見事というほかないだろう。

 さて、ここまでの記述でわかるように、春日恭二というキャラクターはPLたちに愛され、親しまれてきた。それは単にコメディーリリーフとしての優秀さや、シナリオへの使いやすさだけが原因ではない……はずだ。少なくとも本書では、その春日恭二の魅力の新たな側面が見て取れる。
 1つは、悪役の矜持・信念を持っている点だろう。第1話でラーメン屋の息子に語る、彼なりの正義感・善悪観は彼を曲がりなりにも見てきた読者、様々な正義の味方、悪役を演じてきたPLたちに向けて語られたものでもあるのかもしれない。ともかく、何らかの信念を持って動く人間は、それが善であれ悪であれカッコよく見えるのだ。
 TRPGのセッションは、多人数で行われる。それ故か、話の展開は突拍子のない方向へ行くよりはベタな方向へ行くことが多いように思う。突拍子もないのはそれはそれで面白いのだろうか、自分1人でやるのではないことを考えると、理解されやすく一部のPLを置いていく危険性の少ない王道の展開がやはり好ましいのだろう。そうなると、TRPGセッションの巧拙は、ベタな展開をどれだけ熱く、ケレン味たっぷりに演じられるかにもかかってくる。この辺もそつなくこなしているのが、春日恭二というPCだ。それも人気の理由だろう。

 春日恭二は「憎めない悪役」の典型的な成功例の1つであり、本作でもそれは全うされている。彼の本作における行いを正義と表現することは可能だろうが、展開上は「ケジメをつけた」とか「エゴの発露」と表現するほうが正確であるだろう。まあ、たまに正しいことをしてしまうというのも、憎めない悪役の1要素であるから、正義と表現しても問題はないだろうが。
 ということを考えると、悪玉にせよ善玉にせよ、魅力的なキャラクターというのは彼らの信念が先にあるのであり、正義とか悪というラベルは後からついてくるものだろいうこともできるのかもしれない。
posted by 新橋九段 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書狂の冒険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする