2015年07月06日

読解には2種類あるという話

 どこかでしようと思っていたけど、タイミングもないし、新報の方に書くのもおかしな気もしたのでこっちに書くことに。内容は題名の通り、読解には2種類あるという話です。

 書いてあることを書いてある通りに
 国語の試験が嫌いな人なら1度はこう考えたことがあるのでしょう。「こんなテストに何の意味があるんだ?小説なんて好きに読めばいいじゃないか」と。
 確かに各々が勝手にする読書ならその通りでもあるんですが、ある一定の読解の水準というのは様々な場面で必要なので、学校ではその水準にみんなを到達させようと教育を施すことになります。
 で、その水準がどこにあるかというと、学習指導要領を一先ず置いておいて簡単に言えば「書いてあることを書いてあるように読む」という水準だと思っています。
 これは本当にそのままの意味で、教科書にAと書いてあったらAと解釈するだけの能力のことです。これが出来ないと教科書を読むだけでえらいことになるので当然必要な技能となります。
 試験、例えばセンター試験なんかはこの技能をうっとうしいほど要求してくるものです。注意深く読めば、正解の選択肢には本文から「この程度は確実に言える」程度のことしか書いてませんし、不正解の選択肢には本文を読めば間違いだとわかる部分が1つは含まれています。これはまあ、60万人もの人が受ける試験だという性質の都合もあると思うのですが。
 ともかく、読解の1つ、その基礎の基礎の技能として「書いてあることを書いてあるように読む」というものがあるという話自体には納得していただけると思います。

 書いてあることから書いてないことを読む
 読解のもう1つの種類は、書いてあることから書いていないことまで読み取るというものです。行間を読むとか、クリティカルリーディングとか言われたりしますが。
 具体的な例を出しましょう。聖書にある良きサマリア人の例話を知っている人は多いでしょう。あれを「助けてくれたサマリア人と隣人になるよね普通」と読むのが前述の「書いてあることを書いてあるように読む」ということになりますかね。
 これが行間を読もうとすると、例えばサマリア人が当時ユダヤ人と険悪な関係にあったという歴史上の知識が話に持ち込まれます。さらにサマリア人が登場する前に怪我人を見捨てた司祭やレビ人は、ユダヤ教の律法のために死体といった穢れには触れることが出来ない立場にあったという知識、キリスト教の重要な教えである隣人愛が元々ユダヤ教の教えであったという知識も加えます。
 これらを総合的に踏まえて解釈すれば、良きサマリア人の例話は、隣人愛の教えを守るべき司祭やレビ人がそれを守らず、ユダヤ人と険悪であったサマリア人が守ることで当時一般的だったであろう隣人とそうでない者を区別する思考形態(それこそサマリア人に対する態度がいい例だろう)を皮肉っていると理解できるのです。
 もっと卑近な例を出すのであれば、BLEACHに関する読解を行っているBlack and Whiteというブログがいいでしょう。オサレだのライブ感だのと馬鹿にされがちなBLEACHですが、実は構想の初期からかなり綿密に練られた物語であることがわかると思います。
 伏線1 〜黒崎兄妹の名前〜
 作品論5 〈破面篇〉=スペインの新大陸侵略
 取り敢えず2つの記事をあげましたが、前者は作品にちりばめられた暗号を書いてあることの範囲から逸脱しない範囲で解き明かすという意味で、後者は外部から知識を取り入れて作品を捉えなおすという意味で「書いてあることから書いてないことを読む」読解の成功例だと思います。
 ちなみに、『BLEACH』第632話「friend 2」の感想・考察にはアスタリスクの話が出てくるのですが、アニメ一期のOPのタイトルがまさに「*」なんですよね。ここまで考えて久保帯人御大はアニメにも口を出してたんでしょうか。そう考えると、アニメオリジナルのストーリーにどこまでかかわっているかはわかりませんが、それも気になってきますね。

 ここで注意が必要なのは、この手の読解はあくまで書いてあることを基にするということです。書いてないことから書いてないことを予測してもそれはただの妄想ですからね。
 このポイントで「書いてあることを書いてあるように読む」のが生きてくるわけです。書いてあることをそのまま受け止めることが出来れば、そこからより深く読解を発展させていっても脱線はしにくいでしょう。
 一方、書いてあることを捻じ曲げて受け止めてしまえば、そこから正しい深読みは生まれるわけがありません。言い換えれば、その深読みには根拠がないということになるのですから。
posted by 新橋九段 at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする