2016年11月06日

【読書狂の冒険#040】高橋弥七郎『灼眼のシャナ』アスキーメディアワークス

 無事リアルな事情も片付きつつあるので、今月から週1連載に戻していく。ただしょっちゅう記事を書くのを忘れるので、土曜21時更新を日曜21時更新に変えることにした。これで忘れていても休日1日で記事を書いてしまえる。
 今月のテーマは『電撃文庫』。ライトノベルの最大手といっていい、少なくとも私がラノベを読んでいた時代はそうだったレーベルである。今は知らない。このテーマで取り上げる作品を選んでいる時に気がついたのだが、私はライトノベルを意外と読んでいるようで読んでいなかったらしい。一口にラノベといってもいろいろなレーベルがあるし、私は電撃文庫以外もちらほらと読んではいたという事情もあるが、案外タイトルがすっと思い出せないのだ。あるいは、単に昔の話だから思い出せないだけなのかもしれないが。

 『灼眼のシャナ』は、シャナと呼ばれる少女が炎をまとった刀で敵をばっさばっさと切り倒していく、現代能力バトルものと説明してしまって間違いはないだろう。本当は主人公の少年に宿る宝具がどうたらこうたらという背景もあるのだが、ラノベ特有の専門用語をいちいち調べるのが面倒なので割愛させていただく。
 今でこそ某流石なお兄様の影響で「平凡で平均的な俺」が無双する話がラノベの定番(最近の潮流はそこに加えて異世界転生がプラスされるが)なのかもしれないが、このころはまだそういう系統の話は少なかったような気がする(某レベル0の例もあるけど)。本作の主人公も、平凡というところと何やらすごい能力があるところはしっかり備えているが、戦闘力が皆無なので戦いでは何ら役に立たない。すごい能力も、シャナたちが使うエネルギー(存在感のようなもの)が毎日0時になるとどれだけ消費していてもリセットされて満タンになるというヒーラータイプと表現できるものだった。
 そう、このころの標準的なラノベは「いろいろな面でずば抜けた美少女に平凡な俺が振り回される話」が基本だった。ラノベの開祖的な作品である『涼宮ハルヒの憂鬱』もそうだし、今月の最後に取り上げる『電波女と青春男』もそういった要素がある。まあ今でもハーレム系のラノベはそういった構成なのだろうが、あらゆるジャンルでそうだった時代は今や昔だ。
 にしてもだ、どう見たって役立たずな主人公に超人的な能力をもつ少女が惹かれるというこの時代にはテンプレだったストーリーには当時の私もちょっと理解に苦しんだ。ここでいう主人公はオタクの嫌いなヒロイン筆頭候補の「無能な癖に飛び出して窮地に陥るヒロイン」とまんま似たような感じなのだが、自分が代入できるポジションだと全然気にしないというのも随分都合のいい話ではある。ヒロインに対してもおせっかいながら「そいつは禄でもない役立たずだからやめとけよ。そこにもっと有能な男いるだろ」と何度も言いたくなってしまう。まあシャナに登場する能力者って大多数が女だったような気がするが。
 今は一応理不尽なまでの無双という形で役に立つ主人公な分、オタクの恋愛観も多少進展したと考えるべきなのかもしれない。少なくとも「できない自分を受け入れて!」ではなくなったわけだし。

 だいぶ話がそれたような気もするが、よくよく考えるとシャナは私が最終巻を読んでいない作品の1つである。というかラノベの大半がそうなのだが。これはラノベが小説の出版ペースに週刊漫画並の引き延ばしを組み合わせた必然的な帰結である。順当にラノベから「卒業」した場合、つまり小学か中学生から高校生まで長く見積もって7年の間に完結する作品が滅多にないような状況がラノベにはあるということだ。今もおそらく大差ないだろう。一応『電波女と青春男』は完結まで読んだが、それ以外は全滅という状態だ。大作にもほどがある。漫画ならともかく、曲がりなりにも小説が十何巻もあったら付き合いきれないというのが本音だ。そりゃ、途中で作者も死のうというものである。赤川次郎作品並みに各話の繋がりが適当ならまだしも。
 ちなみに私は、『灼眼のシャナ』は「主人公の中の宝具の元の所有者の恋人が主人公たちの前に現れた」あたりまで読んだ記憶がうっすらある。知らない人は何が何だかだろうが、一応説明すると、主人公の中にある宝具は所有者が死ぬと別の人間の中に移る性質があり、登場当初から前の持ち主の存在は仄めかされていたので読者からすると中々驚きな展開のはずだが、そこにいたるまでに確か十巻近く費やしている。モンテ・クリスト伯もビックリである。7巻ちょっとで「長きにわたる物語のカタルシスすごい!」とか思ってたぞ過去の私。
 こうなるともうラノベの文体が合わない年齢とか関係なしに読み返す気力が湧いてこない。風の噂によればその後も主人公が敵にまわったりとか驚きの展開があるらしいのだが、結末を私が知ることは多分永遠にないだろう。せめて主人公たちが幸せな結末を迎えられていることを、他人ごと程度には祈りたい。
posted by 新橋九段 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書狂の冒険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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