2016年06月01日

『キャプテンアメリカ シビル・ウォー』評後編 正義と復讐のバランス

 前編からの続きです。相変わらずネタバレ注意です。

 正義のバランス感覚
 本作で最大のテーマになっているのが、正義に関する考え方です。
 キャップの立場は、自分自身で正しいと思うことを考え、誰にも縛られずに実行するというものです。アメリカの自由の精神ともつながりますし、様々なしがらみにとらわれて正しいと思うことが出来ない、それどころが間違っていると思っていることに引きずられて実行してしまう現代社会のありかたへの批判にもなっているのでしょう。
 対するトニーの立場は、ルールを明確に決め勝手に動かない、集団での意思決定を重んじるという立場です。明確な規則なく実行される正義が、時には悪事と区別がつかないということは、わざわざ「正義の暴走」なるタームを引き出すまでもなく自明な話です。
 対立を形作るうえで重要になっているのが、どちらの考えもよくわかるというものです。これが一方だけとても説得力があったりすれば、どちらも正義のヒーローというシビル・ウォーの企画はそもそもうまくいきません。この「妥協点の見つからない論点」を見つけてくるのが、まずとてもうまいと感じます。ちなみにマーベルがコミックで企画している『シビル・ウォーU』では完璧な未来予知を巡って「利用して未来を変え世界を守る」派閥と「利用せずに自然に任せる」派閥がぶつかります。本当によく見つけてきたなという感じのする論点でしょう。
 そしてそのうまさを引き立てているのが、各々のキャラクターが辿った過去作品での経験です。
 キャップにしてみれば、『ウィンター・ソルジャー』でシールドの崩壊を目の当たりにしており、その後の困難も含めて、組織で動くことの不自由さを身に染みて理解しています。超人となった直後に戦場に派遣されず国債の売り込みパフォーマンスばかりさせられていたという経験も下地にあると思います。結局その後、バッキーが捕虜になったと聞いたキャップが組織の命令を無視して、個人で助けに行ったために、彼が兵士として認められたというのも皮肉な話です。
 トニーにしてみれば、今まで自分の判断で作ってきたもののせいで苦難を味わってきています。アイアンマンになる前は会社で売り込んだ兵器がそれに当たりますし、その後はアークリアクターに命を縮められスーツに依存し、最後にはウルトロンに行き着きました。個人で判断した先にある失敗に、もう彼は耐えられなくなっていたのでしょう。
 各々の立場に行き着くまでを追体験しているからこそ、お互いの主張が理屈抜きに「どっちもどっち」に感じられてしまうのです。

 復讐心の果て
 本作の表のテーマが正義なら、裏のテーマは復讐でしょう。それくらい、本作では復讐が強く絡んできます。
 前編でも書いた通り、ブラックパンサーがオリジンとして向き合った試練は、父親を殺されたことによる復讐心でした。復讐心に突き動かされ、間違った相手を殺しそうになったことが、彼の考えに大きな影響を与えました。
 しかしそもそも、彼の父親が殺された理由は、ジモ大佐による復讐の巻き添えでした。ジモ大佐は、ソコヴィアでアベンジャーズに殺された家族に復讐するために、回りくどい作戦でアベンジャーズを破壊しようと試み、そして成功させました。
 また、本作終盤で和解しかけたトニーとキャップを再び引き裂いたのも、復讐心でした。バッキーが父親を殺したのは操られていたからだということは、トニーもわかっていたでしょうが、それでも赦すことが出来なかったのでしょう。そのことは、冒頭のスピーチや前作までの彼の言動からも察することが出来ます。
 また『AOU』に話を戻せば、ワンダがウルトロンに協力したのもスターク社への復讐が目的でした。
 復讐心を抑え、少し距離を置いた対応の出来たティ・チャラやワンダの結末と、復讐心を全うしようとしてアベンジャーズの崩壊を決定的なものにしてしまったトニーや、最終的に囚われたジモ大佐の結末はあまりにも違います。
 本作では、裏の方でそういった復讐心の果てにあるものを描いていたのかなとも思います。
 そもそもなんでマーベルのヒーローチームの名前が「復讐者たち」なのか、コミックをフォローしていない私にはわかりませんが。

 オマケ
 MCU恒例のエンドロール後の映像は、彼でしたね。上映スケジュール的にはドクターストレンジの可能性もあるとは思いましたが、ここは活躍した彼を全面にアピールする方向に落ち着いたようです。ドクターの活躍は年末まで待ちましょう。
 それと、MCUに限らず私が海外の映画を見るときに楽しみにしているのが、ジョークの掛け合いなのですが、今回のヒットはホークアイがトニーに「隠居生活のゴルフに飽きたのか」と聞かれた時の返答「18ホール18打でまわった。的が外せなくて」です。
 その後アイアンマンに向かって矢を放ち「初めて外したな」「どうかな」で後ろからワンダの能力によって車が襲いかかるという流れが続くのですが、その後ブラックパンサー相手にホークアイがびゅんびゅん矢を外しているのは内緒です。相手と状況が悪かった。
 ちなみに、ジョークではないですが、シャロンとキャップがキスをした時の、それを目撃したバッキーとサムの男子中学生の友達みたいな笑い方もヒットでした。新旧サイドキックとして仲良くやって欲しいですね。
posted by 新橋九段 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ・映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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