2016年01月26日

『四角館の密室殺人事件』感想戦 映像叙述という可能性

 少々遅いですが、先週の土曜日から日曜日にかけて放送されたNHKBSプレミアムのドラマ『四角館の密室殺人事件』の感想戦と参ります。
 今回は綾辻行人の原作ということで、LIVEでの参加者が過去最高を記録したようです。ぜひまた次回もやって欲しいですね。

 以下からはドラマのネタバレが多く含まれます。

 プレミアムメンバー試験というスクリーニング
 本ブログでもヒント集を作ったプレミアムメンバー試験ですが、これはなかなかいいアイデアだったのではないかと思います。
 TVで視聴者が投稿した推理やコメントを紹介するというシステムなのですが、大勢視聴者がいれば変なのもいるわけで、特にネット上では敵視すらされているNHKですから、嫌がらせ目的の不届き物が出てこないとも限りません。そうではなくても、大量にコメントを投稿されれば運営側がパンクすることもあるでしょう。
 そこで、事前に問題を解かせ、正解者のみ投稿できるようにするという仕組みになったのでしょう。
 Twitterやブログなのでこの問題が話題になれば、勝手に番宣にもなり、番組ページに飛べば事前に番組の趣旨や楽しみ方も目にすることになるという、よく考えられたシステムです。
 問題には全周球、つまり360度見渡すことのできる特殊な画像を使用し、これはドラマ本編の謎解きにも活用されました。この前友人が投稿した動画でも見たんですが、映像にも利用できる仕組みなようで、360度型の映画も作れるのではないかとすら言われています。
 新しい技術を積極的に利用できるのも、公共放送の強みかもしれません。

 映像叙述という可能性
 第1夜終了時、全ての視聴者が呆然としたことでしょう。私みたいによそ見してなければですが。
 密室だと思っていた書斎の天井は存在せず、その代わりスタジオの高い天井と大きな照明が見えていたのですから当然です。実は書斎は四角館とスタジオに2つあったのです。
 言われてみれば、階段は(1度だけあったらしい例外を除き)ドラマでは写っていませんでした。青が運んでいた箱が1階と書斎の前では違っていたり、早乙女が館から探してきた箱を書斎前でADに渡すとき何故かわざわざ風呂敷に包んでいたりと違和感はありましたが、気が付きませんでした。
 第2夜が始まるまでに必死に推理したのに、それが全て吹き飛んだ視聴者も多かったでしょう。わざとらしく「事件当時館にいた人間」をまとめて見せたのもミスリードに一貫かもしれません。
 さらに、事件解決につながる重要なヒント―豊原のネックレスについているリングと小野寺の指輪の共通点―も映像で示されただけで説明はありませんでした。人間の感覚受容には限界があり、視覚は注意が向いたものしか見えないという部分をうまく使っています。
 原作の綾辻は「ドラマならドラマならではのトリックを目指したかった」と、ライブストリーミングで語っていましたし、それは成功を収めたといっていいのではないでしょうか。

 不正解を示すことの難しさ
 今回のドラマで難しかったのは、正解の理由を示すことよりも不正解の理由をはっきりさせることの方かもしれません。
 第2問、違和感のある写真を2つ選ぶという問題で、私は「1人で飲んでいたはずなのにテーブルに2つマグカップが置いてある」ことを理由にテーブルの写真を選んだわけですが、これは不正解でした。確かに、2人暮らしの家ならカップが2つ出っ放しなのは一応あり得ることですし、なにより2つ確実におかしい写真があるのでこちらが正解になりようがないといわれればその通りなのですが、釈然としない気もするのは事実です。
 参加型の推理ものの場合、正解を納得させるのと同じかそれ以上に、正解以外の答えがあり得ないことを納得させるのが難しいものです。特に相手が熱心な回答者であればなおさらです。
 また第2夜で、殺されたのがどちらかという問題もありましたが、あれも答えにたどり着くのは難しいでしょう。状況から考えれば、確かに安野が先と言えるのでしょうが、それまでのヒントでは確実な正解を導くのは大変です。

 ともあれ、本作には綾辻の実力と視聴者参加型の推理番組の面白さを再確認させるだけのものがあったのは確かです。特に、映像叙述を見せただけでなく、前作の原作というわけでもないのに、前作の登場人物をうまく話に絡めて物語を作った綾辻行人の技量には脱帽します。
posted by 新橋九段 at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ・映画評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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