2015年08月30日

110番デマとクイズの基本

 この前流行った、110とプッシュして通話ボタンを押すと通信速度が速くなるというデマがありましたね。あれに対する反応としては、「気付けよ」「なんで騙されるんだよ」といったものが中心的でした。
 なんで通話すると通信制限が解除されると思ったのかという部分はさておいて、実はこのデマ、そこそこ巧妙に仕組まれています。その部分を今回は解説しましょう。
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 赤いニシン
 全天候型 史上最強のパズルランドという本があります。著者は芦ケ原伸之という、パズル制作の業界においては有名な人のようです。私は昔1回読んだだけですが、かなり面白いのでおすすめです。
 なぜ唐突にこんな本の話をしたかと言いますと、この本に出てくる「赤いニシン(レッドヘリング)」という技法がパズル作成に、そして今回のデマを分析する際に重要になってくるからです。
 ちょっとここで、以下の問題を考えてみてください

Q1 真っ黒な道に真っ黒な壁、そこに真っ黒な服を着て真っ黒な靴、真っ黒な髪をした真っ黒な男が立っていました。彼は突然かがむと、真っ黒な道に落ちていた真っ黒なボタンを拾い上げました。なぜそんなことが出来た?
Q2 ナポレオンはなぜ赤いベルトをしていた?

 Q1はかなり露骨なのでわかった人もいるかもしれません。正解は「真昼だったから」でした。問題文にしつこく出てきた「真っ黒」は、回答者に真っ黒な夜のような風景を想像させるためのミスリードだったわけです。このミスリードの部分を、赤いニシンと呼びます。
 この言葉の語源は、昔猟犬を訓練する際に使った、赤く塗って目立つようにしたニシンの燻製からだそうです。燻製の匂いに騙されることなく獲物にたどり着けば訓練が終わります。
 ではQ2はどうでしょうか。正解は「ズボンが大きかったから」です。問題文の「赤い」は、回答者の論点を「なぜ赤色なのか」という部分に引き込み「なぜベルトをしていたのか」から引きはがすためのものでした。

 1を2回の後に0
 では元のツイートに戻って考えてみましょう。
 まず注目すべきなのは、110とは一切書かれていない点でしょう。あくまで1を2回押した後に0を押すように書いています。110と書かれればすぐに警察への通報用番号だとわかりますが、この書き方だとちょっと考えないとわかりません。
 また、通話ボタンを押すまでに制限時間をかけている点も巧妙です。iPhoneではプッシュした番号はディスプレイに表示されますが、考える時間を奪うと同時にそこを確認する時間も奪っています。
 細かいことを言えば、「電話のキーパッドにする」という回りくどい表現で「電話をする」という発想に至らないようにも注意しています。

 デマに騙されないようにするために
 今回のデマに引っかかった人を嗤うのは簡単ですが、例えば大災害に巻き込まれた時など、非常時で余裕がないときには同じような愚かな間違いを犯してしまう可能性が誰にでもあります。
 非常時にそのようなデマに騙されないようにするには、デマを目にしないように対策することが大切です。具体的には、普段から出所不明な情報を垂れ流すようなアカウントのフォローを解除するといったことです。余裕のあるはずの平時ですらデマを垂れ流す人物が非常時にまっとうな情報源となる可能性はありません。
posted by 新橋九段 at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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