2015年07月15日

【罪人のアクアリウム】囚人番号1022の身上書

 ある囚人に関する資料
 囚人番号 1022
 氏名 木場元帥 (キバ モトカミ)
 生年月日 ……年3月3日 満33歳
 出生地 日本
 血液型 A型(Rh+)
 身長/体重 172cm/66kg
 その他の特徴 黒髪 酷い猫背
        極度の近眼のため眼鏡が必要
 経歴 ……年 城南大学大学院医学研究科卒業
     同年 御手洗製薬会社の開発部に勤務
     6年後 殺人容疑による逮捕と同時に懲戒免職
 罪歴 ……年 17名の殺人等により死刑判決を受ける
        本人の希望により海洋保全保護施設マレでの懲役となる

 木場元帥取調べの録音からの抜粋
 (殺害の動機は?)
 「戦闘行為です。殺される前にやる……というほどアクティブなものではありませんが、敵の基地に潜入するときに邪魔な兵士を遠くから撃ち殺したみたいな感覚ですね」
 (反省はしているか?)
 「少し表現しにくいですね。褒められるような行為でないことは間違いないですが、必要な行為であったとも思っています。迫りくる敵に対抗するためには。これは主任も言っていたことなんですが、仕方がないと。つまり、戦争がない方がいいのと同じくらい人体実験は無い方がいいんですね。でも戦場に一度降り立ったら銃を撃たないと仕方ない。ああでも戦争がないと兵士は食ってけないのか、それは困るな」

 精神鑑定を行った専門家による弁護人への報告
 最後に、気になったことを付記をさせていただきます。
 今回の鑑定では弁護側の鑑定人として、被告人の精神状態が正常ではなく、少なくとも心身衰弱にあったと結論しましたが、私はこの結論に自信を持つことが出来ません。
 というのも、被告人の場合、善悪の判断が出来ないとか、特殊な精神状態にあったと表現するのにためらわれるケースだからです。彼はどうも、自身の実験によって殺人を犯すことを何ら悪いことだとは思っていない節があるのです。
 例えるならば、我々がこうした書類を書きやりとりし、職務を全うするのと同じ感覚で彼は殺人を犯していたのではないかと思われます。そう考えているであろう証拠は彼の証言の中に、それこそ腐るほどありますが、一番の証拠は彼の上司にあたる人物の証言でしょう。その者の証言が正しいのであれば、木場だけではなく、同じ部署の同じチームで勤める5名全員が同じ感覚で仕事に当たっていたのでしょう。
 少なくとも彼の善悪の基準が狂っていたのは事実です。しかし戦場での殺人が許されるように、薬品開発での殺人が許されると考えていたとすれば、精神状態は極めて正常だったと言えるでしょう。もし彼が心神耗弱なら戦場の兵士はみな心神耗弱となるでしょうから。

 MPM事件判決 被告人全員に死刑判決 三居新聞……年3月3日号外より
 ……年から……年にかけて、新薬開発の過程で100名近い人を殺害した通称MPM事件に関わった御手洗製薬の社員5名の公判が3日、最高裁であった。櫻田正義裁判長は「極めて身勝手な理由による犯行で残虐であり、反省の色もなく更生の見込みは一切ない。被害者の人数だけを見ても死刑を回避すべき理由はない」として求刑通り死刑を言い渡した。
 事件当時新薬開発グループのリーダーであったミッテランド被告は、起訴内容を認めたものの「我々の行為は万病に対する宣戦布告であり戦闘行為である。なぜこうして裁判の場に立たねばならないかまったくわからない」と語り終始悪びれる様子はなかった。
 他の4名の被告人も同様に起訴内容は認めており、争点は5名の責任能力の有無であった。櫻田裁判長は判決理由で、犯行当時全員の行動が計画的であり、かつ犯行が外部に漏れないように慎重に隠ぺいしていたことから責任能力の欠如は全く認められないとして、完全責任能力があったとした。
 ………………
 なお被告人5名は、全員が海洋保全保護施設マレでの懲役を希望したため、……年に批准した条約に基づいて順次輸送されることになる。
 ………………
 なお裁判の傍聴には朝早くから多くの市民が詰めかけ、さらに証拠不十分などで殺害が立証されなかった被害者の遺族による抗議デモや、「マレ」移送へ反対する市民グループのデモが合流し最高裁前はパニックとなった。この騒動で機動隊が出動し、また3名が軽傷を負った。
posted by 新橋九段 at 01:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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