2015年02月22日

空条博士の発見

0.KPをする方へ
 このシナリオは第4回うっかり卓ゲ祭に『空条博士の発見』として投稿された動画の元になったものです。セッション開始前に視聴の有無を確認するのが無難でしょう。
 シリーズとしては赤崎犯科帳に属しますが、テーマとは外れた作品になっています。
 またシナリオにはオリジナルの呪文、生物が登場します。

1.始めに
 このシナリオはクトゥルフ神話TRPG基本ルルブおよびクトゥルフ2010に対応したものです。
 探索者は2〜4名を想定しています。舞台設定は現代日本、初夏です。
 推奨技能は<生物学>です。
 探索者同士が知り合いであれば導入がスムーズです。また探索者に最低1人が探偵のような金を積まれればある程度のことを請け負ってくれる職業についているか、そういうことをしそうな人物である必要があります。
 シナリオの最後に、避けがたい戦闘があります。

2.登場人物
 空条遼太郎 男 44歳 苦難の生物学者
 STR15 CON16 SIZ17 DEX14 APP15 INT15 POW12 EDU18
 HP17 MP12 アイデア75 知識90 幸運60 SAN0 db1D6
 生物学85% 英語75% 水泳60% こぶし70% クトゥルフ神話30%
 呪文 生物の合成(オリジナル)
 地元の大学で教鞭をとる生物学者。専門は海の生物で、特にヒトデ。
 5年前、生物学会をひっくり返すような珍しいヒトデを発見したことで一躍注目を集め、丁度席が空いていたことも手伝って教授職への異例の速さでの出世を遂げます。
 しかしその後は目ぼしい業績もなく、発見したヒトデの研究も否定されたために立場が悪くなり、降格すら噂されるようになりました。
 既婚者だが5年前に妻を亡くしています。高校生の娘がいるが仲は良くないようです。

空条アイリン 女 16歳 博士の1人娘
 STR13 CON12 SIZ14 DEX12 APP15 INT12 POW10 EDU14
 HP13 MP10 アイデア60 知識70 幸運50 SAN50 db1D4
 遼太郎の娘。アメリカ人の母とのハーフ。
 研究にかまけてばかりの父親のことをよく思っていません。また父が変なものとたちと交流を持っていることを気にしています。
 成績と出席率が低めの所謂ヤンキーですが、友達思いで根はやさしい少女です。

 人面ヒトデ
 STR5 CON4 SIZ6 DEX1 INT2 POW1 HP5 MP1
 SAN喪失 0/1D3 ただし合成元の人間が知り合いであれば1/1D6
 人の顔を持つ不気味で巨大なヒトデです。正体はアイリンとヒトデが合成されたものです。
 知性はほとんどなく、口を動かしてなにか言葉を発するのがせいぜいのようです。
 大きさは手の平よりも少々大きい程度でヒトデを土台に福笑いをしましたと言わんばかりの見た目をしています。

 遼太郎の妻
 5年前謎の失踪を遂げた遼太郎の妻です。アメリカ人で夫との仲は良好だったようです。

 芹沢教授
 年は上ですが遼太郎の同僚に当たる人です。導入で何者かに殺害されます。
 実は狂信者と遼太郎との間で、芹沢教授を殺害する代わりに「生物の合成」の呪文を教えるという取引がなされていました

3.生物の合成
 この呪文は異なる種類の動物を合成する呪文です。この呪文によって合成された生物は元々の動物の特徴を併せ持つキメラのようなものになります。
 呪文の方法はいたって簡単で、金属製の箱に合成したい動物2匹を投入し、その箱に海水を充てんします。月が出ている時間に呪文を1時間ほど唱え続ければ箱の中で融合が起こりキメラが完成します。
 誕生したキメラの能力値は元々の動物の丁度平均になります。もし対応する能力値が片方に設定されていなければKPが任意に決定してください。
 呪文を唱えている最中に箱を破壊した場合、呪文を唱え始めてからたった時間が箱の中の動物がおぼれ死なない程度の時間ならまだ生きて出てくる可能性があります。ただしその際溺れのダメージの他に1D3ダメージを受けます。
 呪文を唱え始めて30分ほど経った時なら中からは元の生き物の原型をとどめないムースのようなものが出てくるでしょう。45分以上経っているなら不完全ながらもキメラとして登場する可能性があります。

4.導入
KPは以下の導入を組み合わせて探索者を警察署のイベントに導いてください。なお、必ず1つの導入に1人以上の探索者を関わらせてください。
導入1 血塗れの包丁
 夕方、探索者が道を歩いていると鞄が放置されていることに気づきます。その鞄は女物の高級そうな一品で、見るからにそこに放置するのははばかられるような品です。
鞄が落ちているところから少し行ったところに交番があります。探索者に届けるように誘導してください。
 その鞄を開けると、中には何の変哲もない荷物に混ざって血塗れの包丁が入っていました。突然血塗れの包丁を目にした探索者は0/1の正気度喪失に見舞われます。
 もし<生物学>などに成功すれば、この包丁に付着している血液が本物であることがわかるでしょう。
 落し物の中に事件性のあるものが入っていたため、事情聴取のために探索者は警察署に半ば無理矢理連れていかれることになります。

導入2 芹沢教授の死
 このシナリオには記者や同じ大学に勤める、あるいは通う人間が関わるのがいいでしょう。
 探索者はその日のお昼、大学の生物学教授である芹沢一也と話しをします。内容は何の変哲もない世間話だったり、仕事上の打ち合わせだったりします。その会話の最後に、芹沢教授はある話題を探索者に振ってきます。
 それは「人面ヒトデのことを覚えているか?」というものでした。
 探索者が<生物学>あるいは<知識>の1/2に成功すれば、5年前週刊誌を騒がせた新種のヒトデ、所謂「人面ヒトデ」について思い出せます。それは同じ大学に勤める空条遼太郎教授が存在を確認したとして一時期話題になりました。なんでもそのヒトデに本来ありえないはずの内臓器官が見つかり、もし本物なら生物学の常識が覆るとも言われていました。しかしその後音沙汰はありません。
 芹沢教授はその人面ヒトデの論文が捏造だという根拠を掴んだと言います。しかしそれがあまりにも信じられないものなので今まで発表するか悩んでいたそうです。
 しかし空条教授を何度説得しても捏造を自ら認めないために、遂に公表に踏み切ると言います。明日にはニュースになっているだろうと芹沢教授は疲れた顔で笑いながら探索者を送り出します。
 その日の夕方、探索者の携帯に見知らぬ番号で電話がかかってきます。出てみると、警察署の者だと名乗り探索者にこう告げます。
「芹沢一也さんが殺されました。お話を伺いたいので署まで来ていただけますか?」
 探索者はこうして警察署に向かうことになります。

導入3 襲われた女子高生
 夕方に探索者が帰宅の途についていると、目の前から誰かが駆けてきます。それは高校生くらいの年齢の少女で、かなり焦っているように見えます。
 その少女は息も絶え絶えにこういいます。
 「助けてください……変な人が……車に押し込まれそうになって……」
 その話を聞いていると、彼女が逃げてきた方向から白づくめの、いかにも怪しい者たちが3人走ってきます。そのあとを1台のワンボックスカーがついてきます。この車は窓にスモークがかけられていて、賢明な探索者ならこの車に彼女を押し込んで連れ去る気であったと理解できるでしょう。
 探索者と行き合ってしまった不審者たちは、形勢不利を悟ったのか車に乗って逃げ去ります。ただし、探索者側の戦力と人数によっては戦わせるのも面白いでしょう。不審者が負けた場合は彼らを必ず逃がしてください。さすがにこの段階で正体がばれるとまずいからです。
 もし不審者側が勝ったら、誰か別の通行人を登場させてやはり不審者をその場から逃がしてください。このタイミングで探索者がリタイアするのも流石にまずいからです。
 不審者が去った後、少女は探索者に向かって「警察署に連れてって!行かなきゃいけない用事があるの」と頼みます。

5.空条アイリンの依頼
 導入を終えると探索者は全員同じ警察署に集合します。できれば不審者との対決組が最後に警察署に到着したことになるように調整してください。
 探索者は広めの会議室のようなところに通されます。そこで今回の事件のあらましを聞くことになります。
 この日、導入2で芹沢教授に接触した探索者が彼の元を去った後、教授は何者かに殺されてしまいました。正式な鑑定はまだですが、導入1で発見された包丁が凶器だとみて間違いないとのことです。
 刑事は探索者達に今日のアリバイや芹沢教授の友人関係を簡単に聞いて一旦部屋を出ていきます。
 それと入れ替わりに先程襲われた少女が刑事と言い争いをしながら入ってきます。問いただしてみると、刑事が「実はこの子、もう何度もうちにきて父親が怪しいから調べろって言うんですよ。まだなんの事件も起きてないのに……」と教えてくれます。
 やってきた刑事は少女を振り払いながら「鞄の中から出てきた手帳に、『幸福の巫女』という団体の住所があったんですが、どんな団体か心当たりありませんか?」と聞いてきます。この時点では探索者にも心当たりは全くありません。
 質問が終わると、刑事はもう帰っていいと探索者に告げて去っていきます。
しかし探索者が帰ろうとしても、先程の少女に食い止められます。彼女は自分の名前を空条アイリンと名乗って、聞いてもいないうちから事情を話し始めます。
彼女曰く、最近父親の様子がおかしく、怪しげな人々と何度もあっているとのことです。そしてその人々は自分を襲った人々でもあり、今疑惑が確信に変わったと言います。
また5年前に母親が失踪していますが、その時も同じようなことを父親はしていたと言います。
 彼女は探索者たちに半ば強引に依頼をしてきます。それは「父親が接触している変な組織の正体を掴んでほしい」というものです。

6.幸福の巫女
 先程刑事から聞いた幸福の巫女についてはインターネットで調べることが可能です。
 <図書館>に成功すれば、とあるHPがヒットし、これが地元の新興宗教団体だとわかります。
 この教団は最近地元に現れた団体で、さほど規模は大きくないものの熱心な信者をいくらか獲得し安定した経営をしています。教祖は「古池千里」と名乗る女性で、元々この地方を支配していた巫女の生まれ変わりだと書いてあります。教義はこの土地をあるべき姿にもどし、住民を幸福へ導くことです。教祖の写真はこのHPにはありません。
 教団の本部は警察署からそれほど離れていないところにあります。HPにも「見学大歓迎」とでかでかと書いてあります。また教祖に会いたければ事前に電話をすればたいていの場合は会えるようです。
 また<オカルト>に成功すれば、この教団の存在を即座に思い出すことができ、さらに教団の設立が5年前であることも思い出せます。

7.教団本部
 幸福の巫女の本部は簡素な3階建ての商業ビルです。1階は受付と事務室や応接室、3階は毎週金曜日の集会に使われる講堂、2階には書庫や儀式に使う道具を入れておく倉庫やなどがあります。
 探索者が事前に電話をしていれば教祖が側近の男と迎えてくれます。そうでなければ<幸運>が必要でしょう。失敗すれば教祖はいないので出直す必要があるかもしれません。
 教祖である古池は極めてフレンドリーに探索者を迎えてくれます。
 古池に率直に包丁と一緒に入っていた布や不審者が落としたバンダナについて尋ねると最初はきょとんとした顔をします。そして一緒にいた側近の男に耳打ちされると「私たちのほうでは把握していませんが、そのような行動をとった信者がいれば問題ですね。こちらでも調査を進めておきます」と言います。<心理学>などを用いても、その言葉には悪意やごまかしは一切みつかりません。
 しかし探索者が教団から立ち去ろうとした時、先程の側近が追いかけてきます。そして「私たちが把握していない不審な動きは確かにあるようなんです。最近、教祖の方針に不満をもつ者が少なからずいるようなので」と耳打ちしてくれます。

8.空条教授について
 アイリンの話を聞いた探索者は父親である空条教授について調べるかもしれません。
 空条教授の情報はネットで簡単に調べることが出来ます。恐らく<図書館>に成功すれば、「人面ヒトデの論文」を発見できます。
 <生物学>に成功すれば、もし本当にこのような生物がいれば生物学の常識をひっくり返すようなものだと理解できます。一方で論文の真偽には確かに疑わしい部分もあることもわかります。なおこの論文に人面ヒトデの写真はありません。
 また空条が教授になったのは5年前で、この発見の功績のためだということもわかります。

9.空条教授の研究室
 空条教授はたいていの時間帯研究室にいます。探索者が訪ねてあえないことはまずないでしょう。
 空条研究室はいかにも生物学者の研究室といった感じで、書籍や論文が収納された本棚の他に大きな水槽がいくつもあり、その中には色とりどりのヒトデが息づいています。
 空条教授は研究者らしくなく大柄で筋肉質な体型をしていますが、その眼はどこか虚ろで隈もできています。机の上は散らかり放題になってもいます。<精神分析>に成功すれば、何か余裕がないような印象も受けます。
 空条教授は探索者に娘を助けてくれた礼を述べると、質問に答えてくれます。
 5年前の妻の失踪については、最初他人に言うことではないと憚ります。<説得>に成功すれば、教授は詳しいことが全く分からなくて困っていると言います。周囲の目から見ても妻の失踪は突然で、かつなんの前触れもありませんでした。皮肉にも失踪日は妻の誕生日でした。警察も行方を追っていますが、手掛かりはつかめていないと言います。
 謎の集団について空条教授は全く知らないと言います。白尽くめについて尋ねても、実験で白衣を着ることも多いから、娘はそれを見間違えたのだろうと言います。
 娘との関係については、自分がヒトデに夢中になってばかりいるから嫌われていると自嘲気味に語ります。
 5年前発表した人面ヒトデの論文については、あまり気持ちのいいものではないと前置きしてその写真を特別に見せてくれます。ファイリングされた写真には赤と黒の毒々しいヒトデに人間の口と眼球が張り付いたような奇妙な生物が色々な角度で写っています。中には明らかに解剖した写真もあり、ヒトデの中に人のものと思われる消化器官の一部や脳が確認できます。このような奇妙な写真を見てしまった探索者は0/1D3のSANチェックを行います。
 <写真術>に成功すれば、この写真には細工がないことがわかるでしょう。また<生物学>に成功すればこの生物も作り物ではないように感じれます。

10.入れ違いの来客
 探索者が空条教授の研究室から出ると入れ違いに数人の来客があります。パッと見はいたって普通の人たちですが、<目星>と<アイデア>の組み合わせに成功すると、HPや本部で見た幸福の巫女のシンボルマークがあしらわれたアクセサリーをしていることに気が付きます。また導入で不審者と戦い手傷を負わせた場合、来客の中にその傷を負っている者がいることにしてもいいでしょう。その場合<医学>か<目星>の1/2に成功すると判明します。
 彼らが教団の関係者だと感づくと探索者たちは会話を盗み聞いたり後を付けたりすることを思いつくでしょう。会話を盗み聞くには<聞き耳>に成功する必要があります。成功すれば「……感づかれている?」「それはない」「念を入れるべきだ……する」「わかった」といった会話が断片的に聞こえます。
 後を付ける場合はまず研究室から出てくるところを待ち伏せしなければいけません。廊下には隠れるところも少なく他の研究室も閉まっているので<隠れる>に成功する必要があります。もっとも、トイレなど妥当な場所をPLが思いつけた場合はこのロールは不要としていいでしょう。
 探索者たちが無事待ち伏せに成功すれば、彼らのあとを追うことが出来ます。ただし<忍び歩き>に成功する必要があり、失敗すると向こうにばれてしまいます。
 彼らは大学構内をでて駐車場に止めてある車に乗り込みます。この車はアイリンを襲うのに使用したものとおなじものです。襲撃に遭った探索者なら<アイデア>で、直接車は見ていないが外見は他の探索者から聞いている探索者なら<知識>でそれと特定できます。ただしナンバーは全く違います。
 車に乗った客人はそのまま車を走らせます。これを追跡するには<運転>に成功する必要があります。気づかれずに追跡することに成功すれば車は郊外にある自動車整備場の建物の中に入ります。

11.空条研究室の書類
 空条教授の研究室になにか手がかりがあるのではないかと考えた探索者がいれば、教授が留守の間にそこを調べようと提案するかもしれません。しかし研究室は教授の留守中は鍵がかかっているのでこの問題を解決する必要があります。
 研究室の合い鍵はアイリンが持っています。彼女は父親を怪しいと踏んで調査する際に、こっそり合い鍵を作っていたのです。なので彼女に依頼すれば開けてもらえます。
また研究室の鍵はさほど厳重なものではないので<鍵あけ>に成功すれば容易に開くことが出来ます。
 研究室には金庫があります。この中に重要な手がかりが入っていますが、パスワードが必要です。パスワードは8ケタの数字ですが、その数字はアイリンも知りません。パスワードはずばり「奥さんの生年月日」です。探索者がどうしても思いつかないならアイリンを介してヒントを与えてください。
 金庫の中にはいくつかのノート、USBメモリ、小さなケースがあります。
 ノートは何かの実験をしたような記録がつけられていて、日記と実験ノートの合いの子のようなものです。このノートは少し古びています。<図書館>に成功すると5年前の日付でこう書いてあるページを見つけます。
 「3月12日
 生物を混ぜる呪文は一応完成した。今回は蛸と犬を混ぜたが取り敢えずキメラの状態で生きてはいる。しかしまだ混ざり方が不安定であり、成功率が高くない。改善が必要なのは言うまでもない。
 今回作成したキメラが大暴れしたため研究室が滅茶苦茶になってしまった。この呪文で作った生物の結合を解いて殺す粉はつくっておいたが、いざ手で撒こうとするとうまくいかない。教団の1人が粉末消火器に入れておく案を思いついたのでそれを採用することにした。その細工をした消火器は、消火器を新しいものに変えるタイミングでこの階の廊下にあるものと入れ替えておこう。使用期限は確か6年くらいだったな。」
 「6月22日
 ようやく成功した。何度も失敗を重ねたがこれで見返してやれる。私にはこっちの才能はあったのかもしれない。
 今回は鯉と猫を混ぜたものを5匹つくった。混ぜた動物の特徴は丁度半々になった。しかしどこにどの動物の特徴が出るかまでは制御できないようだ。3匹はえら呼吸が出来たが2匹は肺でないとだめだった。
 明日はいよいよ人間をつかってみようと思う。あいつらには言っていないが、いいものが出来たら新発見の生物として学会に発表するつもりだ。いい加減結果を残さないと出世もかなわない。もちろん流石にありのまま論文に書くわけにはいかないが。
 今 日突然妻が訪ねて来た時は驚いた。なにもみられていないとは思うが。」
 「6月23日(最後のページ)
 見られていた。」
 USBメモリには写真とメールのコピーが入っています。写真は「生物の合成」の実験記録で、日付ごとにきれいに整理されており、様々な動物が写っています。中には2つの動物の特徴を持つキメラのようなものや、ピンク色のドロドロのムースのような物質のものも含まれています。このようなグロテスクな写真を見た探索者は1/1D4のSANチェックです。
 メールのコピーには研究の進展を喜ぶものやさらなる成果を催促するもの、頼まれていた動物を届ける日程などが書かれています。
 USBを閲覧するためにパソコンを調べた場合、あるいは<目星>をした場合はパソコンの電源ケーブルが千切れそうになっていることに気が付きます。
 小さなケースには指輪が入っています。裏面には日付が彫ってあります。
 日記をみた探索者は廊下の消火器を探すでしょう。これは研究室から少し離れた所にあります。ただし、ケースに入っておりケースの扉を開けると警報がなるようになっています。

12.異形の襲撃
 一通り探索が終われば、探索者は一旦家へ帰るでしょう。
 その時、一番探索の動機が薄いであろう探索者に向けて、襲撃イベントを発生させてください。
 探索者が1人自宅でくつろいでいると部屋の外から物音がします。<聞き耳>に成功するとこの音を聞くことが出来ます。その音はなにか部屋の外の物を倒した音です。
 音に気が付いた探索者が部屋の外の様子を確認すると、そこにはなんともおかしな生物がいます。この生物は蛸の姿をしているのですが1本の足の尖端が蠍の尾のようになっており、もう2本が鋏を持っています。体のところどころには甲殻のようなものもついています。<生物学>に成功すればこの動物は真蛸とダイオウサソリの特徴を持っていることがわかります。
 この生物は探索者の存在に気が付くとまるでそれが天に与えられた使命であるかのように襲いかかってきます。なお<聞き耳>に成功すれば扉一枚隔てた状態で戦闘が始まりますが、失敗した場合探索者はこの異形の侵入を許しすぐそこまで接近された状態ではじまります。
 蛸蠍 異形の生物
 STR15 CON11 SIZ6 DEX6 INT5 POW1 HP8 MP1
 SAN喪失 0/1D3 
 棘のある足を振るう 15% ダメージ1 POT9の毒 毒は体の痺れを起こしDEX-2する。
 鋏のある足を振るう 15% ダメージ1D6 1Rに2回攻撃可能
 上記の攻撃は1Rに全て同時に行使可能。
 組み付き 50% ダメージはなし
 装甲 なし
 探索者は自分が部屋の外へ逃げ出すかもしれません。そうした場合探索者は外にいる不審な一団に気が付くことが出来ます。彼らの車はアイリンの襲撃にしようされたもので、格好もその時と同じものです。
 もし探索者が戦おうとした場合は、KPは逃げることも可能だとそれとなく伝えてください。それでも戦おうとするばあいは仕方ありませんが。
 その一団は探索者が逃げるか倒れるかすると蛸蠍を回収して逃げ去ります。その後を追うには「入れ違いの来客」の部分と同じことをします。
 なお、この蛸蠍を見て人面ヒトデの写真も見た探索者が<アイデア>に成功すれば、この2つの生物が似たような出来方をしていることがわかります。

13.芹沢教授の論文
 芹沢教授の研究室は、彼の殺害の舞台となった場所ですが、探索者が訪れるころにはもう警察による規制はありません。鍵もかかっていない状態になっています。
 探索者が机に<目星>をすると、「人面ヒトデの虚構」と銘打たれた論文の束を見つけることが出来ます。
 <生物学>に成功した探索者はこの論文の内容を理解できます。論文によれば、人面ヒトデの人に近い部位とヒトデの部位では細胞のDNAが全く違い、しかも人に近い部分のDNAは空条教授のものと半分一致しました。つまり人面ヒトデは2つの生き物を何らかの方法で結合させた作り物で、しかも空条教授は血縁関係のあるものを材料にした可能性が高いと結論付けています。

14.動物の調達
 空条教授の研究室の書類をみた探索者は動物の調達先を探るでしょう。
 またこの街には観賞用の昆虫や爬虫類を取り扱う店があります。そこに訪ねていくと、数日前蠍や蜘蛛を不自然な数買っていった客の存在を教えてくれます。店主によればもっと売って欲しいということだったので流石に不審に思い、商売を始めるならそういう業者のところに行ってくれと言ったそうです。また<目星>や<生物学>に成功すれば、売った蠍の中に探索者を襲撃した蛸蠍の元になったのではないかと思われる種類のものが見つかります。

15.自動車整備場
 不審者の車をつけるとその車は郊外の自動車整備場に入っていくことがわかります。ここは既に事業者が倒産し自動車整備場としての業務は行っていないようですが、不審者たちがアジトにしています。
 建物は1階建てで、事務所の部分と自動車を整備する作業場の部分に別れています。事務所には特に不審な部分はありません。
 作業場のシャッターは降りていますが、事務所から入ることが出来ます。作業場には古い工具がある程度で不審な点はありません。しかし地下へ続く通路があり、そこから地下1階へ入ることが出来ます。この地下は元々車の下に潜り込んで作業をするスペースですが、今は整備用の工具の代わりに様々な書類やパソコンがおかれています。パソコンには空条教授とやり取りしたメールが残っています。
 また手記もあり彼らが教団を裏切って強力な力を持つ怪物を利用し、権力を握ろうとする計画についても以下のように書かれています。
 4月23日
 教団幹部の野郎は頭が固い。
 大体権力を握りたいならわざわざ神様の落とし子を探さなくてもいいだろう。
 もっと賢いやり方がある。なんで空条に作らせた呪文を棄てちまったのかわからねえ。
 あのキメラがあればいくらでも生物兵器を作れるのに。
 6月10日
 空条と交渉がうまくいった。芹沢って奴一人殺せば呪文が手に入る。楽ちんなことだ。
 ただあいつの眼はやばい。人を殺すのをなんとも思ってなさそうな眼をしてる。
 何年も裏社会を渡ってきた俺の勘がそういってる。殺しが終わった後用済みだとか言って殺されかねねえ。
 注意すべきだ。
 あと娘も攫えとか言ってたが、なんのためだ?
 学者センセの考えることはわからん。
 6月14日
 ようやく呪文のやり方がわかったからメモしておく。
 まず合成したい生き物を2匹用意する。
 これを金属製の箱に入れて海水で満たす。
 1時間くらい呪文を唱えたらキメラの完成。
 マーシュが呪文を棄てちまった理由がわかった気がする。
 面倒だ。

16.全ての真相
 今までの情報を整理すると、次のような真相が浮かび上がるはずです。
 まず幸福の巫女内部に教祖に不満を持つ人間がいて、なんとかして力を手に入れて教祖を追い落とそうとしていました。
 そこで空条教授に働きかけて、5年前に作成した呪文の再現を依頼しました。その際引き換えとして芹沢教授を殺害する計画を立てていました。
 空条教授は5年前、人面ヒトデの材料に自分の妻を使いました。実験を見られてしまったからです。そして実験に勘づき始めている娘を、今度は材料にしようとしているのです。

17.ラストイベント
 探索3日目の18時、最後のイベントが発生します。その2時間ほど前からアイリンの携帯が通じない状態にしておいてください。
 18時になると空条教授から「見せたいものがあるから来るように」と研究室へ招待を受けます。
 研究室の机には大きな箱のようなものがあり、布がかかっています。また<アイデア>に成功すればこの前訪れた時より水槽の数が増えていて、それらも布で覆われていることに気が付きます。また<聞き耳>に成功すれば、部屋全体から腐臭が漂っていることに気が付きます。
 空条教授は探索者に向き直ると「これが私の研究成果だよ……ここまでたどり着くのに苦労したよ」と語り箱の布を取り去ります。そこには大きなヒトデのような生物がいました。<聞き耳>に成功すると呻いたり濁った声で探索者の名前を呼んだりしていることがわかります。近くによってよく見ればわかりますが、このヒトデは写真で見た人面ヒトデそっくりであることがわかります。
 探索者がこのことを指摘すると教授は「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」といい手を叩きどこかに合図を送ります。すると増えていた水槽を破って蛸蠍が大量に部屋に流れ込みます。空条教授は狂ったように笑いながらその波にのまれてしまいます。割れた水槽の向こうには例の不審者が3人水死体の状態になって出てきます。
 蛸蠍の数は3D10+10匹です。これらは探索者めがけて襲いかかってきます。机の上に飛び乗って逃げる場合は<跳躍>に成功する必要があります。一度失敗しても次のラウンドの蛸蠍の攻撃までに<跳躍>あるいは<登攀>で登るか、既に机に登っている探索者に引き上げてもらうことで登ることが出来ます。
 机の上には1Rに1D6匹の蛸蠍が登ってきます。この蛸蠍は探索者の自宅へ襲撃したものより小型です。これは攻撃することで叩き落とすことが可能です。
 蛸蠍(小)
 STR11 CON8 SIZ4 DEX4 INT5 HP6
 SAN喪失 0/1D3 
 棘のある足を振るう 15% ダメージ1 POT7の毒 毒は体の痺れを起こしDEX-2する。
 鋏のある足を振るう 15% ダメージ1D6 1Rに2回攻撃可能
 上記の攻撃は1Rに全て同時に行使可能。
 組み付き 50% ダメージはなし
 装甲 なし
 研究室は3階にあり、机と扉は離れているので逃げ場はありません。だだし<登攀>に2R成功すれば壁の水槽の部分や棚に足をかけてドアまで進み、それを開けることで外に脱することが出来ます。1人が外に出られれば蛸蠍の半分がそちらに気を取られ向かいます。
 <登攀>に失敗すれば床に転落します。床にいる場合は1D4+2匹の蛸蠍から攻撃を受けることになります。
 また<跳躍>で直接窓を突き破って外に逃れることも不可能ではありません。ただし落下時に2D6ダメージを負うことになります。<跳躍>にもう一度成功すれば1D6で済みます。なお1度目の<跳躍>に失敗すれば無様に床に落ちます。

18.研究室からの脱出
 研究室から脱出する方法は2つあります。1つはドアから出て、消火器を取りに行きそれを使うという方法です。
 2つ目の方法は壊れたコードを利用して部屋全体に電気を走らせる方法です。探索者がパソコンを調べればパソコンのコードが何故かちぎれそうになっていることに気が付けます。
 研究室の床は水びたしになっているので、そのコードを使えばほんの少しの間ですが蛸蠍の動きを止めることが出来ます。DEX*5のロールに成功すれば蛸蠍が再び動き出す前に部屋を抜け出すことが出来ます。スタンガンを所持している探索者がいればそれを使うこともできます。その場合はDEX*3のロールが必要です。

19.シナリオ終了
 消火器を使えばブザーが鳴り、騒ぎになるのでいずれ研究室での出来事は警察の知るところとなります。探索者たちは警察の取り調べを簡単に受けて返されることになるでしょう。後日ニュースでは空条博士は実験中に毒を持った動物に刺されて死亡したことになっています。
 研究室から脱出した者たちには報酬として1D6+3の正気度報酬が与えられます。また<生物学>および<オカルト>に成長ロールを行うことが出来ます。
 シナリオ上不可能に等しいですが、アイリンを救うことが出来たなら正気度報酬に1D6を追加します。
ラベル:赤崎犯科帳
posted by 新橋九段 at 11:16| Comment(0) | TrackBack(0) | CoCシナリオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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