2015年02月08日

【CoCシナリオ】這い寄る困惑

0.KPをする方へ
 このシナリオは拙投稿動画『えーき様と罪人どものCoC』で使用したシナリオに加筆修正を施したものです。セッションをする際は念のために動画を視聴したか確認したほうがいいでしょう。
 またこのシナリオは所謂シティシナリオに当たります。読んでいただければわかるように正気度喪失、技能ロールの機会が少なめになってしまっています。セッションの際にはこれらのタイミングを増やすか、ロールプレイに時間を割くような楽しみ方がよいかもしれません。NPCは大勢出ますので。

1.初めに
 このシナリオは基本ルルブとサプリ『クトゥルフ2010』に対応したものです。
シナリオの舞台は現代日本、中程度の規模の都市です。
 プレイヤーキャラクター(以降、探索者)は4〜5人ぐらいを推奨します。
 新しく探索者を創造する場合は、教授や学生といった自由な時間を作りやすい職業を選んでもらうとゲームに参加しやすいでしょう。
 推奨技能は<精神分析>や自衛できる程度の戦闘技能です。<法律>や<オカルト>があると活躍の幅が広がるかもしれません。
 なお、あらかじめ探索者同士が知り合いだったほうが、ゲームはスムーズに進みます。
 また、探索者が相談を受ける女子大生と知り合いである方が導入が楽になります。

2.あらすじ
 探索者たちは市内の大学に通う女子大生鴨谷響子からストーカー事件の解決を依頼されます。彼女曰く、警察に相談してもつれない対応しかしてくれなかったとのことです。
 探索者たちの捜査の結果、彼女の元カレである東仗助を容疑者として特定します。しかしいくつかの矛盾点にも気づくでしょう。実は彼は響子の友人である霧野美鈴に利用されていただけでした。探索者たちはこの真実に気づき、響子を守りきることができるのでしょうか?

3.ストーカーの類型
 今シナリオではストーカーという犯罪が密接にかかわってきますので、最初にこのことについて解説します。
 まずストーカーの類型です。一口にストーカーと言っても様々な種類の者が存在します。ここでは関係のある2類型について簡単に取り上げます。
・拒絶型ストーカー
 拒絶型といわれるストーカーの多くは被害者の元パートナーです。別れ話を切り出されたり、実際に別れた後にストーカー化する場合が多いです。今シナリオでは東仗助がこの類型に当たります。
 特徴として、執拗な嫌がらせが挙げられます。拒絶型ストーカーはプライドが高く、別れを切り出されたことでそれが傷つき、これに対する報復感情がストーキングの動機になるからです。具体的には大量の手紙、誹謗中傷を書いたビラを撒く、ペットの殺害、家族への脅迫といった行為に及び最終的には殺人にまで発展します。そのため最も危険なタイプのストーカーと言えるでしょう。
 一方でもう一度よりを戻したいとも思っており、プレゼントや謝罪といった行動に表れることもあります。
・親密希求型ストーカー
 親密希求型のストーカーは統合失調症か、その他の妄想性の障害のために自分が被害者と恋愛関係にあるとか愛し合っているといった妄想を抱いて付きまとうタイプのストーカーです。今シナリオでは霧野美鈴がこれにあたります。
 加害者は被害者に妙に馴れ馴れしい態度で接するために、被害者が当惑するケースが多いです。
 また、加害者の抱いている妄想は合理的な説得などでは解消せず、逆に妄想に合わせて曲解される恐れすらあります。

4.ストーカー規制法
 ストーカー被害に遭った際に被害者が取りうる行動のうち最も合理的なものが、警察にその被害を訴え出ることです。
 警察は訴えを受けると、ストーカー規制法に基づき加害者に警告を発することができます。この警告に従わない場合は逮捕され、懲役または罰金が科されます。警告を経ずに直接刑事告訴することも可能です。
 ストーカーの細かい定義はありますが、ここではおおよそストーカーといって想像できる行為が当てはまると考えてください。メールを繰り返し発信する行為も含まれます。
 しかし被害の訴えは必ず受け入れられるとは限りません。その場合警察は必ず文書によって訴えを受理しなかった理由を告知する必要があります。
 時代が進み、ストーカーが痴情のもつれからくるものだという旧態依然とした思い込みは払しょくされつつありますが、その地域の警察署の体質によっては未だに根強く残っている可能性もあるでしょう。

5.登場人物
鴨谷響子 被害者の大学生
STR10 CON8 POW14 DEX8 APP12 SIZ9 INT12 EDU15
HP9 MP14 SAN60/99(不定48) アイデア60 幸運60 知識75 BD0
回避16 聞き耳50 図書館65 目星50 運転(自動車)60 信用55
 20歳 女。市内で独り暮らしをしている女子大生です。探索者たちにストーカー事件の解決を依頼してきました。
 半年近く前から被害に悩まされており、一人で出歩くのが不安、電話のコール音に過敏になるなどの症状も出始めています。しかしそれを除けば人当たりもよく、明るい性格をした女性です。

霧野美鈴 事件の黒幕
STR10 CON9 POW12 DEX11 APP14 SIZ10 INT12 EDU15
HP10 MP12 SAN0/ アイデア60 幸運55 知識75 BD0
回避22 聞き耳90 心理学80 隠れる90 忍び歩き70
呪文 星の精の召喚従属(p283)
   深淵の息(p260)
 20歳 女。鴨谷響子と同じ大学、同じ学部に通う女子大生。明るい性格をしているが、どこか自分本位なところもあります。
 その正体は響子に付きまとうストーカーの黒幕です。大学で知り合った彼女の気を引くために別の男にストーキングをさせて、相談に乗って響子と親密になろうという算段でした。
 しかし響子が自分にではなく探索者に相談したことから、歯車が狂ってしまいます。

東仗助 響子の元カレ
STR13 CON12 POW9 DEX14 APP15 SIZ13 INT10 EDU12
HP13 MP9 SAN0 アイデア50 幸運45 知識60 BD1d4
回避50 武道(空手)60 キック70 こぶし80 ナイフ70 応急手当70
武器 コンバットナイフ 1d4+2+db 耐久15
 20歳 男。鴨谷響子へのストーキングの実行主犯です。彼女への嫌がらせの大半は彼の仕業によるものです。
 元々響子と仗助は付き合っていましたが、4か月前にわかれています。その後彼は怒りに駆られストーカーになりました。
 美鈴とは彼女から接触されたことで知り合っています。知り合った後は殆ど彼女のアイデアと指示で動いていました。

駒村拓臣 犬好きの警部
STR15 CON18 POW13 DEX16 APP8 SIZ17 INT13 EDU13
HP18 MP13 SAN65/99(不定52) アイデア65 幸運65 知識55 DB1d6
回避70 組み付き90 武道(組技系)90 聞き耳80 追跡90 法律60 信用70 日本刀60
 47歳 男。赤崎市警捜査一課の刑事です。寡黙で多くを語らない性格ですが、正義感の強い人です。犬を2匹飼っていて、毎朝公園を散歩させています。
 響子の事件を最初に聞いたのが彼でした。しかし不可解な圧力によって事件への関与を封じられてしまいます。一警察官である彼にはどうすることもできず、そのことを悔やんでいました。

永崎貴之 赤崎大学心理学部教授
永崎衣玖 赤崎大学学生支援室長

 47歳 男、41歳 女。夫婦で大学に勤めるNPCです。神経質な性格のくせにKYで気が利かない夫と、大胆でサバサバしているものの思いやりに溢れる妻というコンビになっています。
 彼らは赤崎署の前署長と親交があり、夫の方は彼と協力し4年前にストーカーの対策マニュアルを作り上げています。もっとも、署長が今の人物に代わってからは警察との関係は希薄になっているようです。

東良平 現赤崎署署長
 56歳 男。赤崎署の現署長にして仗助の父、今回の事態の悪化を招いた元凶ともいうべき男性です。
 彼は自分の息子がストーキングに関わっていると知ると、それが外に漏れるのはまずいと考え駒村警部に捜査を辞めるように命令し、仗助を説得しやめさせ内々にことを終わらせようとしました。しかしそれにも失敗し、仗助を追い詰めて響子を襲わせようとする霧野の放った怪物に襲われて命を落とします。

6.導入・鴨谷響子からの相談
 シナリオが始まる前に、鴨谷響子と知り合いである探索者は彼女からメールで相談をされます。それはストーカー被害に遭っており、その解決に協力してほしいというものです。
 日時が指定されており、探索者はその日に響子の自宅があるマンションに向かうことになります。この時必ずメールを受け取っていない探索者も理由をつけて連れていくようにしてください。
 響子のマンションに到着すると、彼女が出迎えてくれます。そして今までの被害の状況などを教えてくれます。
 具体的な被害としては、ポストに隠し撮りされた写真と一緒に手紙が毎日のように投函されているというものです。宛名のない茶封筒に入った手紙は綺麗ではない字で、響子への恨みつらみが延々と書かれています。封筒には一筆書きの星に目が描かれた、所謂エルダーサインが書かれています。
この手紙に対して<精神分析>に成功すれば、恨みだけではなく文章の合間に怒りや、逆によりを戻したいなどという感情が垣間見られます。
 彼女はまた、尾行されている気がするとも話してくれます。尾行している男は日によって違うようで、いずれも見たことがない者だと言います。
 ただし、もう少し突っ込んで話を聞けば、4か月ほど前に分かれた彼氏がいたことを教えてくれます。
 被害は半年前から始まっており、探索者に相談する前に、大学の学生支援室のようなところと警察にそれぞれ相談をしたそうです。学生支援室では警察に行くように指示されましたが、警察では一度相談を受けただけでそれ以降は「それは警察の仕事ではない」などと言われて取り合ってもらえなかったそうです。
 初めに相談を聞いてくれたのは駒村という警部だったようですが、警察署に電話して彼を出してもらおうとしても出勤していないと言われるだけのようです。
 この話の時<法律>に成功すれば、警察の対応のおかしな点に気が付けます。ストーカー規制法では、警察が対応しない場合はその理由を文書で告知する必要があるはずです。それを響子はされていません。
 最後に、話を聞き終わり部屋を去ろうとする探索者に響子は「これは気のせいかもしれないんですけど」と前置きをして、ある症状を訴えます。それは、夜になるとどこからか笑い声のようなものが聞こえるというものです。何度か周囲を見渡したり外に出て確認をしても人っ子一人いないという状況が続いているようです。

7.被害の裏側
 響子が訴えた被害の大部分は彼女が4か月前に別れたという元カレ、東仗助とその不良仲間によるものです。
 例えば付きまといは響子に顔の割れていない不良仲間が交代で行っていました。故に彼女には見覚えのない男が入れ替わりで尾行しているように感じられたのです。
 手紙は仗助が送ったものです。彼が手書きしたものに写真を添付し、彼女のマンションに不良仲間が直接投函しています。
 しかし写真は彼らが撮ったものではありません。それは霧野美鈴という人物が撮影したものです。

8.霧野美鈴
 探索者が初めて大学にやってきたとき、あなたたちに話しかけてくる女性がいます。彼女の名前は霧野美鈴といい、響子の親友だと言います。彼女は探索者たちに、響子が大学に最近来ていないがどうしたのかと尋ねてきます。
 実は彼女こそストーキングの黒幕です。彼女は響子に対して妄想的な愛情を抱いており、それがストーキングに発展してしまったのです。
 霧野がストーキングを開始したのは響子と出会った半年前からですが、仗助とは4か月前、丁度彼が響子と別れたころに出会っています。無論霧野はそれを知っていて仗助に接触しています。
 彼女は自分が直接ストーキングするよりも、仗助にやらせておいて自分は響子に相談されるほうが都合がよいと考え、彼をそそのかしてストーキングを行わせます。
彼女はこの時既に響子の部屋に設置された盗聴器によって探索者の正体を知っています。話しかける口実としては「前に響子と一緒に歩いているのを見たから、知り合いだと思った」などと言います。
 彼女に響子の元カレについて尋ねると、彼の名前は東仗助ということ、法学部に通っているということ、響子とは4か月前に分かれたことを、自分は直接会っていないようなふりをしながら教えてくれます。また仗助について、とにかく悪いやつだという印象を植え付けようと悪し様に言い立てます。<心理学>に成功すれば、その不自然さに気が付くでしょう。
 逆に、響子に霧野について尋ねると、時々家を行き来したりするそこそこ仲の良い友人だというでしょう。しかし親友というほどではないようです。

9.赤崎大学学生支援室
 響子が最初に被害を相談したのは、大学にある学生支援室です。ここは学生へのカウンセリングルームの機能を兼ねており、様々な問題を解決することを目標としています。
 探索者が訪れると、響子の相談にのったカウンセラーである永崎衣玖が対応してくれます。ただし、彼女に相談内容について尋ねるには響子を伴っていくか、彼女と個人的な繋がりがある必要があります。それ以外の場合にはどのような技能を使用しても守秘義務を理由に突っぱねられてしまいます。
 話を聞くことに成功すると、彼女はストーカーについて書かれた本を渡してくれます。また、響子の元カレである東仗助が最近大学を訪れていないことも教えてくれます。
 彼女が渡してくれた本には「3.ストーカーの類型」や「4.ストーカー規制法」に書いたことが書かれています。必要に応じてまとめてPLに渡すといいでしょう。
 永崎衣玖は、赤崎署と協力しストーカー対応のマニュアルを作り上げた永崎貴之の妻です。彼女にもし、警察署での対応を話したら「あそこは対策に熱心だからそんなはずはないわ」と言いながら首を傾げるでしょう。
彼女と繋がりが出来たら、この繋がりを通じて探索者を永崎貴之に接触させてもよいでしょう。シナリオの進行によっては、学生支援室に貴之を向かわせるという方法もあります。

10.永崎教授
 永崎貴之は赤崎大学の心理学部に研究室を構えています。夕方ならアポなしでも接触することが十分可能です。
 彼は犯罪心理学の専門家であり、4年前に赤崎署のストーカー対策マニュアルを作成した人物でもあります。
 彼に話を聞けば、警察署の内実を少しだけ話してくれます。曰く、マニュアルを作成した時には署長は違う人物だったそうです。今の署長は前任者とは違い、事なかれ主義の官僚体質だと言います。
 また署長には1人息子がいますが、それが問題児で幾度も事件を起こしているらしいと教授は言います。もっとも、噂の域は出ないようです。

11.赤崎警察署
 響子が相談した警察署は市内にあるものです。その警察署内で<目星>に成功すれば、あるポスターが目に留まります。そのポスターは赤崎署のストーカー対策の成果を謳うもので「ストーカー被害は警察へ」などとコピーが書かれています。またポスターのそばにある掲示には署長の名前の入ったものがあります。それによると署長の名前は「東良平」です。
受付へ行くと、婦警が対応してくれます。響子の相談に最初にのった駒村警部は現在停職処分にあると教えてくれます。
 <説得>など適当な技能に成功すれば、受付の婦警が署内の噂話を教えてくれます。それは、駒村警部が警察署の上層部に食って掛かったために疎まれて停職になったというものです。彼女によれば、警部は元々正義感が強く、事なかれ主義的だった幹部とそりがあわなかったようです。
 ポスターについて尋ねれば、4年ほど前に大学の教授と連携してストーカー対策のマニュアルを作成し、管轄内の被害を激減させたそうです。その効果は目覚ましく、他の警察署が視察に訪れる程だと言います。少なくともストーカー対策に不熱心ということはなさそうです。

12.夜に這い寄る影
 夜になるとストーカーが響子への攻撃を開始します。このイベントは探索のヒントを与えることになりますので、KPは探索の経過を見て時間を進めてください。最低でも2回ほど行われるのが望ましいでしょう。
 夜になるとストーカーは響子のマンションにある郵便受けに手紙を残し、周囲の道にビラを貼って逃げるという行為を繰り返します。この作業には、仗助の息がかかった不良仲間が駆り出されています。
 張り紙には、意味不明な文言が書き散らされており辛うじて響子を罵倒したいという意図をくみ取ることが出来ます。技能で判定するまでもなく、正常な精神状態で描かれたものではありません。所々見たこともない奇怪な絵も描かれており、また文字自体が紙一面にびっしりと書かれており並々ならぬ執念を感じさせます。そしてもっとも不気味なのが、大量にある張り紙の全てがコピーしたものではなく手で書かれたものだということです。このような不気味な張り紙を目の当たりにした探索者は0/1D2の正気度を失います。
この張り紙は日を追うごとに徐々に酷いものになって行きます。正気度喪失は始めの1回のみでかまいません。
 手紙は2種類のものが日によって交互に投函されます。1日目には小奇麗な封筒に入った手紙が投函されています。大量の便箋には響子への想いが丁寧な字で延々と書かれています。初めに見た手紙とは違い憎悪の念は感じられませんが、不気味な印象を受けるでしょう。<精神分析>に成功すれば、この手紙を書いた者が妄想の世界に浸っている節があることがわかります。
 2日目には初めに見たような手紙が投函されています。しかし張り紙と同じく狂気的な憎悪に満ちており、所々不気味な絵も描かれています。

13.宵闇の待ち伏せ
 夜になると手紙を投函しに来るという情報を得た探索者は、その時間に待ち伏せようと考えるでしょう。
 実際に待ち伏せをするには<隠れる>等の技能はいりません。街灯の多くない道ですので、宵闇が探索者を隠してくれるでしょう。しかし技能があるなら成功によってボーナスを与えても構いません。
 探索者が待ち伏せをしていると、原付に乗った不良が3人ほどやってきます。彼らは原付の明かりを頼りに手紙をポストに入れたり、張り紙を貼ったりします。
 探索者が不良に話しかけると、彼らは威嚇してきて場合によっては攻撃を仕掛けてきます。しかし人数が不利だと悟ると原付に乗って逃げようとします。彼らに話を聞くには捕まえる必要があるでしょう。
 また、探索者が不良に攻撃を仕掛けようとするまさにその時、響子から切迫した声で電話がかかってきます。彼女は「ドアのそばに何かいる、笑い声が聞こえる」としきりに言っており、パニックのような状態に陥っています。探索者がその場で<聞き耳>に成功すれば、確かに響子の部屋がある2階から笑い声が聞こえてきます。
 探索者が2階に昇ると、ドアのそばには猫しかいません。しかし笑い声がよりはっきりと聞こえてきます。そして探索者の目の前でその猫が突然宙に浮き、断末魔の叫びを上げたかと思うと急激にしぼんでミイラのような状態になっていきます。
 ミイラになった猫は地面にポトリと落ちます。そして今まで何もなかったはずのところに真っ赤な塊が、中心から水に落ちた絵の具が広がっていくように姿を現します。その塊は無数の突起を持ち、それがそれぞれひくひくと動いています。鉄と腐った肉の匂いも周囲に漂ってくるでしょう。この化け物こそ、霧野が呼び出し使役している星の精です。遭遇した探索者は1/1D10の正気度を喪失します。
 星の精は探索者の方を向きけらけらと笑いますが、それ以上何もしてこずにその場から立ち去ります。
 星の精の犠牲になった猫を調べてみると、複数の穴のような傷が開いており、そこから血が抜かれたような状態になっています。
一方、不良を拘束した探索者は彼らから情報を得ることが出来ます。彼ら曰く仗助は響子と別れたあと、確かに気は立っているようでしたがストーカーになるほどとは思えなかったそうです。しかしある女性と出会ってから急に態度が変わり今のような行為を不良仲間にも強いるようになっていきました。仲間たちは彼の腕っぷしと警察署長の息子という立場を恐れて逆らえなかったそうです。
仗助が豹変する前に出会った女性が誰だったのか、不良に尋ねようとすると突然彼らは苦しみだし、口から水を大量に吐いて倒れます。彼らは溺れたように手足を動かし窒息して死んでしまいます。探索者がいかなる手段を講じてもこれを止めることはできません。このような奇怪な現象を目撃した探索者は1/1D3の正気度を失います。
彼らが死んだあと、死体を<医学>で調べればまさに溺れ死んだ状態になっていることがわかります。また<博物学>などを使えば彼らが吐いた水が海水であることがわかるでしょう。
探索者が不良の死体を調べたのち、周囲に<目星>をすれば誰かがそばから走り去った気配を感じます。しかし追いかけることはできず、直ぐに見失ってしまうでしょう。実はこの人影は霧野であり、自分のことが露見する前に口封じをしたというわけです。
それからすぐに、警察がやってきて死体を回収し、探索者は事情聴取に追われて夜を明かすでしょう。

14.駒村警部
 響子から事件の訴えを最初に聞いた人物である駒村警部との接触場所は、探索者が置かれた状況で変わってくるでしょう。
 もし待ち伏せの前に接触する場合は、朝に公園で犬を散歩させているところを話しかけることが出来ます。待ち伏せ後であれば、彼が復職して警察署で接触することになります。
 彼に話を聞くと、自分が停職になるまでの経緯を話してくれます。響子から訴えを受けたあと、駒村警部は捜査に乗り出し東仗助がストーカー犯であることを突き止めます。しかし仗助の父親である署長に「私が息子を説得してやめさせるまで待て」と捜査を止めるように圧力をかけられます。それに反発した結果停職という事態になってしまいました。
 待ち伏せ後には、署長の行方が分からなくなっていること、事件を知った上層部があわてて停職を解いたことを教えてくれます。また取り逃がした不良がいる場合、彼らが市内の川から水死体となって見つかったことを教えてくれます。
 この水死体の背景には、霧野の思惑と焦りがありました。というのも、彼女は仗助に響子をストーキングさせることで彼女を困らせ、その相談にのろうと考えていました。しかし響子が実際に相談したのは探索者でした。あては外れた霧野は響子にもっとひどい嫌がらせをすれば自分にも相談するだろうと考え不良たちを動員しようとしましたが、不良たちは流石に怖じ気づき反発してしまいます。
 不良たちがもう自分の思う通りに動かないとみた霧野は、彼らを使って仗助を追い詰め響子への凶行へ走らせようとしました。具体的に言えば、仗助の周囲にいる者を順番に、自分が殺したとわかるように殺していき、彼の逃げ場をなくしどうせ死ぬなら響子も一緒に殺そうと考えるように仕向けたということです。

15.仗助の部屋
 探索者が望むなら、仗助の部屋を捜索することが出来ます。住所は響子から教えてもらうか警察署で駒村警部から教えてもらうことが可能です。
 また、部屋の捜索の際家族が家にいるかどうかはKPが探索者の技能を考慮して決めてください。ただし、不良たちの溺死以降仗助は家に帰っていません。
 仗助の部屋はいたって普通の大学生のものです。サッカー選手のポスターなどが貼ってあり、異常なものはパッと見見当たりません。ただし机の上には手紙を書くのに使ったと思われる便箋と茶封筒が置いてあります。
 <目星>に成功すれば探索者は彼の机の引き出しから手紙と小瓶を見つけることが出来ます。手紙には「貴方と手を組むにあたって信頼の証としてこれを差し上げます。これを撒けば私の切り札を無力化することができます」などと書かれており、小瓶には粉が入っています。また<アイデア>に成功すれば手紙の封筒が響子のマンションに投函された手紙のうち、小奇麗なものの方と同じであると感づけます。
 小瓶の中身はイブン=グハジの粉であり、星の精を可視化する能力があります。
 ちなみに、探索者にとっては意外なことに、仗助の部屋には響子を撮った写真やカメラの類は一切ありませんでした。

16.不気味な絵
 不良たちが貼っていた張り紙に書かれた不気味な絵とは、刺々しい丸い物体を描いたようなものです。星の精に出会った探索者ならそれに似ているのではないかと思います。
 また<オカルト>や<芸術>に成功すれば、手紙の文章の一部分に文体の違う記述があることがわかります。そこには例えば「空から飛来したる化け物が、笑い声を上げて人々を襲い」などと書かれています。
 <歴史>などの技能を使用すれば、その一説がこの地域の昔話として残っていることを思い出します。その話に関する本は図書館にあります。
 <図書館>に成功すれば、この街の昔話をまとめた本をいくつか見つけることが出来ます。
児童向けに纏められたものでは、里を守る主人公である巫女に退治される、空から降ってきた化け物という形で登場します。この本の表紙には、手紙に書いてあった眼球を炎で炙っているような図案が描かれています。
またこの話の元となった伝承を記録した本も見つかります。そこには化け物の挿絵も書かれており、張り紙にあった絵と全くと言っていいほど同じものです。
書物に書かれている星の精の情報は以下の通りです。透明で血を吸った時だけ姿を現します。ただし街を守る巫女が撒いた粉を浴びると姿を現すとされています。また皮膚に特徴があり、弓矢の類を弾き返したという記録があります。

17.霧野の部屋
 探索者の中には響子の部屋を調べようというものが出てくるかもしれません。霧野のマンションの住所は響子が知っています。
 玄関にかかっている鍵を開けて霧野の部屋に入ると、極めて平凡なワンルームがそこには広がっています。ただ見ただけでは異常な点は見当たらないでしょう。
 しかし机に対して<目星>を行えば、その引き出しから大量の響子を隠し撮りした写真が出てきます。その写真の撮影と印刷に使ったと思われる機材は机に設置されています。
 また本棚には一冊だけ妙に古ぼけた本が置かれています。他の本は新しいものなのに、その一冊だけ古いために目立って見えるでしょう。題名は「空からくるもの」となっています。
 その本の表紙には、初めに見た仗助からの手紙にあったようなエルダーサインが書かれています。著者や出版年のような情報はありませんが、<博物学>や<歴史>に成功すればそれが明治から大正時代に出版されたものだとわかります。
 内容は図書館の本にあったような星の精に関するさらにはっきりした情報、さらに化け物を操る方法とそれを可視化する粉の製造法についてです。具体的には<星の精の召喚/従属>(p283)と<イブン=グハジの粉>(p252)が記載されています。
 この本を読むには<日本語>に成功し2時間かける必要があります。またその際1D4/1D8の正気度を失い、<クトゥルフ神話>に+2%します。
 また部屋をよく調べれば響子の部屋にあったようなテーブルタップや、仕掛けきれなかった盗聴器と思われるものが出てきます。タップは霧野が響子の部屋にあるものと、自分で盗聴器を仕掛けたものとを入れ替えたためにここにあります。

18.その他の調査
 もし探索者が水死事件を受けて、最近街で同様の事件がないか調べた場合、野良猫が数匹同じような死に方をしていることがわかるでしょう。ミイラ化した死体についても同じです。
 響子の部屋に盗聴器が仕込まれていないか調べた場合、<機械修理>に成功すればテーブルタップと鞄の中から1つずつ発見できます。これは霧野が響子の部屋に上がった際に隙をみて設置したものです。この街には盗聴器を販売するような店はなく、霧野がインターネットで購入した品です。
 ちなみに、響子は仗助を部屋にあげたことはないと教えてくれます。

19.BAD END
 探索開始後3日ほどで、事態が急変します。このイベントはいわば最終決戦に当たりますので、KPは探索者の様子を見て十分探索が終わったころに挿入するか、初めから挿入する日時を告知するかしてください。
 夜に探索者が捜査をしていると、響子の携帯に電話が入ります。それは仗助からで、何か大声で訳の分からないこと叫んでいます。しかしよく聞いてみると「お前を今から殺しにいく、お前を殺して俺も死ぬ。どこにいるかはわかってる」などと言っていることがわかります。
 探索者が駒村警部の連絡先を知っていれば、彼からも連絡が入ります。彼は切迫した声で仗助の両親が何者かに殺されたと話しています。殺され方は普通ではなく、ミイラの様に萎んだ状態で発見されたということです。
 この時点で探索者が霧野美鈴が黒幕であることに気が付いているかどうかでこれ以降の進行が変わってきます。
 もし気が付いていない場合は、以下のようになります。
 探索者が響子の護衛をしていると、仗助がやってきます。彼は覚束ない足取りで探索者に迫ると、殺す、死んでやるなどと連呼してナイフを振りかざし突進してきます。素人目に見ても説得の余地は残されていません。
 仗助が戦闘不能になったときに戦闘が終了します。彼は警察に引き渡され、表面上事件が解決します。しかし翌朝駒村警部から衝撃的な連絡を受けます。それは獄中で仗助が溺死したというものです。当然留置所でそのようなことは起こりえません。
 それと同時に響子からも電話が入ります。しかし受話器から聞こえてきたのはただの叫び声に近いものでした。そして声が切れたかと思うと霧野の声が聞こえてきて、こう言います。「さようなら間抜けども、私は響子と一緒に……」

20.GOOD END
 もし仗助との戦闘に勝利した段階で霧野が黒幕であるということに気がついていた場合、シナリオは以下のように進んでいきます。
 仗助に勝利し探索者が一息ついたところで、後ろから響子の叫び声が聞こえてきます。後ろを振り返ると、星の精に掴まれたらしく宙に浮いている響子と憤怒の形相を浮かべて探索者を睨み付ける霧野の姿があります。
 霧野は探索者に向けて今までの計画について、邪魔をされた不満と共にぶちまけます。「仗助に付きまとわせて、私が響子の相談にのる手筈だったのに、邪魔しやがって……私と響子の幸せを邪魔する奴はみんな殺した!あとはお前らだけだ!」この独白は、霧野がいかに響子に対する妄想を抱いていた、事実を都合よく捻じ曲げながら交えると効果的でしょう。「初めて会った時にわかったの!私と響子は結ばれる運命なんだって!響子もそう思ってるわ!私じゃなくてお前らみたいなゴミに相談したのも、私を気遣ってのことよ!そうに違いないわ!」
 星の精は響子を掴んでいるためにその位置をおおよそつかむことが出来ます。しかし不可視の状態であるために攻撃するには技能値の-10%で成功する必要があるでしょう。戦闘が進むにつれ、響子の血液を吸血し姿が鮮明になっていきますが、完全に見えるころには響子は手遅れになっているでしょう。イブン=グハジの粉を使用すればそれを待たずに可視化できますが、正体を見た探索者は無論1/1D8の正気度を失います。
 霧野が従属している星の精は基本的に1体ですが、響子を拘束している個体の他にさらに呼び出していたことにして戦闘に参加させても構いません。探索者の戦闘技能とすり合わせて決めてください。
 響子を拘束している星の精は彼女から吸血することに専念します。ただし響子のSTRが1だけ残るように吸血します。響子を弱らして動けないようにすることで独占しようとする霧野にそう命令されているからです。吸血が命令通り終われば、星の精は彼女をその場に捨てて探索者に襲い掛かってきます。
 霧野とすべての星の精を撃破すると、彼女は意識を失いその場に倒れ伏します。騒ぎを聞きつけた住民が通報したことにより警察が到着し、全ての後片付けをしていきます。あるいは、霧野が倒れた時点で星の精の従属が解け、彼女の血液を飲み干して殺害し去って行ってもよいでしょう。

21.結末と今後の展開
 探索者は後日、駒村警部に呼び出され警察署でことの顛末を聞くことになります。彼曰く、被害の訴えを放っておいた責任を追及されたくない署の幹部によってこの事件は「仗助と霧野が結託して響子をストーキングし、その過程でいがみ合いになったために仗助が不良仲間や自分の両親を殺し、最後に響子を襲おうとしたがたまたま近くにいた探索者に返り討ちにされた」ということになりました。
 響子は心の傷を抱えながらも、大学に復帰しいつも通りの生活を取り戻したと、支援室の永崎衣玖から教えてもらえます。また教授によれば、結局署の幹部は全員更迭され、前任の署長が戻ってくることになったそうです。
 このシナリオでは霧野が星の精の従属方法を入手した理由が明らかにされていません。また地元に残る伝承との関連も仄めかされていましたがそれも詳しくは不明のままとなります。この点については今後のシナリオに繋げキャンペーンとして扱うこともできます。

22.探索者への報酬
 見事事件を解決し生還した探索者には1D8の正気度回復が与えられます。また霧野の陰謀に気が付き響子を救えた場合は追加で1D6の正気度を回復します。
 この事件を1つの魔導書として扱い、探索者の<クトゥルフ神話>に+3%します。また<法律>と<精神分析>に成長ロールを行うことが出来ます。
ラベル:赤崎犯科帳
posted by 新橋九段 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | CoCシナリオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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